前回の記事では、相続税は基礎控除額を超える場合にかかること、計算はまず法定相続割合で行うことをご紹介しました。
では、相続税がかかる家庭はどうすればよいのでしょうか?実は、法律には「相続税を軽減できる特例」がいくつも用意されています。今回は代表的なものをご紹介します。
1. 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
最も強力な特例が「配偶者控除」です。
配偶者が相続する財産については、1億6000万円まで、または法定相続分までのどちらか多い金額まで非課税 になります。
例えば、夫が亡くなり妻が8000万円を相続する場合、基礎控除を超えていても妻には相続税がかかりません。
ただし「申告しなくてよい」わけではなく、特例を使うためには相続税申告が必須です。
2. 小規模宅地等の特例
相続財産に自宅や事業用の土地が含まれる場合に使える特例です。
一定の要件を満たせば、土地の評価額を 最大80%減額 できます。
例)亡くなった人が住んでいた自宅土地(240㎡まで)は、同居していた配偶者や子が相続すれば、評価額を80%引き下げられます。
1億円の土地が2000万円の評価になるイメージです。
3. 相続時精算課税制度
贈与による節税策として注目される制度です。
父母や祖父母から60歳以上の人が、18歳以上の子や孫に贈与する場合、2500万円まで非課税 で贈与できます。
ただし、将来相続時に精算される仕組みなので「相続税の前払い」ともいえます。生前贈与の手段として活用されるケースが多いです。
4. 生命保険の非課税枠
生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
例えば法定相続人が3人いれば、1500万円までの死亡保険金は非課税。現金をそのまま残すより有利になることがあります。
5. その他の軽減制度
- 相続人が未成年や障害者の場合:一定額を差し引ける控除があります。
- 相次相続控除:短期間に続けて相続が発生した場合、二重課税を調整できます。
節税策は「事前準備」がカギ
これらの特例はとても有効ですが、知らなければ使えないのが現実です。
また、制度によっては「相続人が同居していること」「申告期限までに分割協議を済ませること」といった条件があります。
特に小規模宅地等の特例は、「誰が相続するか」を決める前に安易に遺産分割すると使えなくなることもあります。
まとめ
- 配偶者控除や小規模宅地等の特例は節税効果が大きい
- 生命保険や生前贈与を活用するのも有効
- 条件や期限を満たさないと特例が使えないことがある
「相続税がかかるかもしれない」と思ったら、早めに特例の確認をしておくことが大切です。
👉 次回(第3回)は、生前からできる相続対策と実務上の注意点 を解説します。
「相続税を減らす」という視点だけでなく、家族がもめないための工夫についても触れていきます。
📌 参考:
日本経済新聞朝刊(2025年10月4日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
