最近ニュースでよく耳にする「自社株買い」。
東京証券取引所の発表によると、2025年度の上半期(4~9月)で企業が行った自社株買いの金額は過去最大の6兆円超になりました。これは、海外の投資家よりも大きな金額で、今や企業が「日本株の一番の買い手」になっているのです。
でも、「自社株買い」ってそもそも何?どうしてこんなに増えているの?投資を始めたばかりの方にも分かりやすく解説していきます。
まずは基本:「自社株買い」ってどんな仕組み?
企業は株式を発行して資金を集めています。私たちが株を買うのも、その発行された株です。
「自社株買い」とは、その株を企業自身が市場で買い戻すことをいいます。
どうしてやるの?
自社株買いをすると、いくつかの効果があります。
- 株の数が減るので、1株あたりの価値が上がる
例えば、10個のケーキを10人で分けていたのを、8個に減らして同じ10人で分けるようなものです。1人あたりの取り分(株価の価値)が増えます。 - 「自社株は割安だ」と経営陣が考えているサイン
「うちの株は安すぎるから、今のうちに買い戻そう」と言っているようなもので、投資家の安心材料になります。 - 資本効率を高める
企業が持っているお金や資産を有効に使っていることを示せるので、「眠らせている現金が多すぎる」と批判されてきた日本企業にとって、イメージ改善になります。
どんな企業がやっているの?
今回特に目立ったのは、日本を代表する大企業です。
- 三菱商事
最大1兆円もの自社株買い計画を発表。4~9月だけでも5800億円分買い戻しました。株の発行数の17%にあたる規模で、国内トップクラスです。 - 信越化学工業
5000億円の自社株買いを発表。株価は発表前は下落気味でしたが、その後2割ほど上昇しました。「自社株買いが株価の押し上げにつながった」分かりやすい例です。 - ソニーグループ
最大2500億円の自社株買いを発表。M&A(企業買収)などの投資と並んで、自社株買いを戦略のひとつに位置付けています。
なぜ今こんなに増えているの?
背景には、東京証券取引所の要請があります。
2023年に東証は上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営をしてください」と呼びかけました。
それまで「内部留保」と呼ばれる現金をため込んでばかりいた企業も、株主への還元を増やす動きにシフトしたのです。
その結果、自社株買いや配当の増額が一気に広がり、日経平均株価は4万5000円台と史上最高値を更新しました。
でも注意点もある
自社株買いは投資家にとってうれしいニュースが多いのですが、いいことばかりではありません。
- 成長への投資が減るかもしれない
本来は新工場を建てたり、新しい事業に挑戦したりするためのお金を「株の買い戻し」に使ってしまうと、将来の成長が遅れる可能性があります。 - 株価が高いときに買うと効果が薄い
「安いから買い戻す」なら株価上昇につながりますが、すでに最高値圏での自社株買いは「割高な株をさらに買っている」ように見えてしまい、投資家の不安材料になることもあります。 - 一時的な効果に終わることも
株価を押し上げる効果はありますが、それだけでは長期的な企業価値の向上につながらない場合もあります。
投資初心者はどう見ればいい?
自社株買いのニュースを見たときに注目すべきポイントは3つです。
- 規模の大きさ
数百億円規模なのか、数千億円規模なのかでインパクトは変わります。 - 企業の意図
「株価が安いから買い戻す」のか、「ROEを上げたい」のか、「株主還元を強化したい」のか。背景を理解することが大事です。 - 成長投資とのバランス
自社株買いと同時に、研究開発や設備投資も進めているかどうかを見ると安心できます。
まとめ
- 2025年度上半期は、企業による自社株買いが過去最大の6兆円超。
- 株高を下支えした大きな要因のひとつ。
- 三菱商事や信越化学など大企業が主導。
- ただし「成長投資を犠牲にしていないか」「高値での買い戻しは効果が薄い」などの課題もある。
- 投資初心者は「規模・意図・成長投資とのバランス」の3点をチェックするのがおすすめ。
📌 参考:
日本経済新聞朝刊(2025年10月3日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

