60代開業は本当に遅いのか ― 人生100年時代の起業観を問い直す

FP
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60代での開業と聞くと、「遅いのではないか」という声が聞こえてきます。
体力や市場環境、IT対応力などへの不安が先に立つからです。

しかし、人生100年時代において、60代は必ずしも終盤ではありません。
むしろ、経験が最も蓄積された時期でもあります。

本稿では、60代開業は本当に遅いのか、その構造を整理します。


なぜ「遅い」と感じるのか

まず、遅いと感じる理由を整理します。

1. 体力・健康への不安

長時間労働や新規営業への負担を想像し、消極的になる場合があります。

2. IT・デジタルへの苦手意識

オンライン化が進む中で、若い世代との差を意識することがあります。

3. 投資回収期間の短さ

事業を軌道に乗せるまでの時間と、残りの労働年数を比較してしまう心理があります。

これらは合理的な懸念です。
しかし、それだけで遅いと断定するのは早計です。


60代だからこその強み

60代には、若い起業家にはない資産があります。

1. 信頼という無形資産

長年の職務経験、人間関係、実績は、信用力として蓄積されています。
専門職やコンサルティング型の事業では、信用は最大の競争力です。

2. 判断力とリスク管理能力

多くの成功と失敗を経験しているため、過度なリスクを避ける力があります。
若さはスピードを生みますが、成熟は安定を生みます。

3. 生活基盤の安定

住宅ローンの完済や子育ての終了など、生活コストが落ち着いているケースも多くあります。
これは、収益至上主義に陥らず、長期視点で事業を育てられる環境ともいえます。


事業モデルの変化が追い風になる

かつての開業は、店舗・設備・人員といった初期投資が前提でした。
現在はオンライン化やクラウド活用により、小さく始めることが可能です。

・リモート型サービス
・メールやオンライン会議中心の顧客対応
・AIによる業務効率化

こうした環境は、年齢よりも設計力を問う時代に変化しています。

「体力勝負の起業」から「知的設計型の起業」へと軸が移っている点は、60代にとって追い風です。


最大の課題は「過去を手放せるか」

60代開業の成否を分けるのは、年齢ではありません。
過去の肩書や成功体験にどこまで依存するかです。

組織での地位や役職を前提とした思考から、
「一人の専門家」としての再定義が必要になります。

  • 指示する立場から、選ばれる立場へ
  • 管理する側から、価値を直接提供する側へ

この転換ができれば、年齢は障害になりません。


60代開業の現実的な戦略

感情論ではなく、現実的な設計も重要です。

1. 固定費を抑える

自宅事務所やオンライン中心の体制により、損益分岐点を下げます。

2. 専門特化する

広く浅くではなく、経験を活かせる分野に集中します。

3. 無理をしない成長戦略

急拡大ではなく、安定収益型を目指します。

これらは若年起業よりも、むしろ60代に適した戦略といえます。


人生設計の再定義

60代開業を「遅い」と感じる背景には、
60歳=引退という旧来の価値観があります。

しかし、平均寿命が延び、健康寿命も伸びています。
60代は20年以上の活動期間を見込める年代です。

開業を「最後の挑戦」と捉えるのではなく、
「第三の人生ステージ」と捉えることで、視野は大きく変わります。


結論

60代開業は遅いのでしょうか。
答えは、事業モデルと設計次第です。

体力やスピードでは若年層に劣る部分があるかもしれません。
しかし、信用、判断力、経験という資産は代替できません。

年齢が問題なのではなく、
時代に合わせて自らを再設計できるかどうかが問題です。

60代は終盤ではありません。
成熟した経験を価値に変える準備が整った年代です。

遅いかどうかではなく、
どう活かすかが問われています。


参考

・日本経済新聞 2026年2月17日夕刊「〈ライフスタイル 働く〉過去の価値観、手放そう シニアや転職者『アンラーニング』」

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