2026年の円相場を左右するもの――日米金融政策と積極財政のせめぎ合い

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2025年の円相場は、対ドルで5年ぶりに上昇しました。ただし、その実態は「円高への転換」と言い切れるものではありません。ドル安という外部要因に支えられた側面が大きく、ユーロやスイスフランなど他の主要通貨に対しては、円安がむしろ進行しました。
2026年の円相場を展望するうえでは、日本の金融政策だけでなく、米国の利下げ動向、さらに日本の財政運営との組み合わせを立体的に捉える必要があります。本稿では、2025年の円相場の評価を起点に、2026年に円を動かす要因を整理します。

2025年の円高は「自力」だったのか

2025年のドル円相場は、年初と比べて1%程度の円高・ドル安となりました。年間ベースで円高となったのは、世界的なリスク回避が進んだ2020年以来です。
しかし、この動きをもって円の信認が回復したと評価するのは早計です。2025年は、米国の通商政策や中央銀行の独立性への懸念から、ドルそのものが売られる局面が目立ちました。ユーロや英ポンドは対ドルで大きく上昇しており、円は主要通貨の中では最も上昇率が低いグループにとどまっています。
さらに重要なのは、円がドル以外の通貨に対しては一貫して弱かった点です。対ユーロ、対スイスフランでは歴史的な円安水準を更新しており、2021年以降続く円安トレンドが終わったとは言いにくい状況です。

日銀の利上げと限界

2025年、日本銀行は政策金利を引き上げ、長期金利も約30年ぶりの水準まで上昇しました。日米金利差は一定程度縮小し、理論上は円高要因となる環境が整いつつあります。
それでも円高が定着しなかった背景には、日本の金融政策が依然として「緩和的」と評価されている点があります。物価上昇率を考慮した実質金利で見ると、日本は主要国の中で際立って低水準にあります。
市場から見れば、日銀の利上げは慎重かつ段階的であり、為替相場を反転させるほどのインパクトには至っていない、という評価が支配的です。

積極財政が円安圧力になる理由

もう一つ無視できないのが、日本の財政政策です。高市政権の下で進められている積極財政は、景気下支えや成長促進という面では評価される一方、為替市場では円安要因として受け止められています。
金融政策が引き締め方向に向かっても、財政が拡張的であれば、インフレ率は高止まりしやすくなります。その結果、実質金利は上がりにくく、通貨価値の押し上げ効果が弱まります。
この「金融はブレーキ、財政はアクセル」という組み合わせは、市場にとって分かりやすい円安シグナルとなりやすく、円相場が思うように戻らない要因となっています。

2026年の焦点は米国の金融政策

2026年の円相場を左右する最大の要因は、米国の金融政策です。米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切るかどうか、またそのペースがどの程度になるのかによって、円相場の方向感は大きく変わります。
米国では減税や歳出拡大といった景気刺激策が続く可能性があり、インフレ再燃への警戒も根強くあります。その場合、利下げが見送られ、ドル高・円安が進むシナリオも想定されます。
一方で、FRB議長交代を契機に金融政策が転換し、利下げが進めば、日米金利差の縮小を通じて円高が進む可能性もあります。市場では、140円台への円高から、160円台への円安まで、幅広い予測が並立しているのが実情です。

急激な円高リスクもゼロではない

見落とされがちですが、リスクシナリオとして急速な円高も存在します。FRBが利下げに転じる一方で、日銀が利上げを前倒しすれば、金利差縮小が一気に進む可能性があります。
日本の政策金利が実質で極端に低いことを踏まえると、わずかな政策変更でも市場の反応は大きくなりがちです。円安が長期化した反動として、短期間での円高修正が起こる余地は十分にあります。

結論

2025年の円高は、円の構造的な強さを示すものではなく、ドル安に助けられた側面が大きいものでした。2026年に向けて、円相場の本質的な転換が起こるかどうかは、日本単独では決められません。
日銀の金融政策、政府の財政運営、そして米国の利下げ動向。この三つの組み合わせが、円の行方を左右します。為替相場は単純な円高・円安の二択ではなく、政策の「組み合わせの結果」として動くものであることを、改めて意識しておく必要があります。

参考

・日本経済新聞「今年の円、米利下げが左右 積極財政で下落圧力 25年は5年ぶり上昇」(2026年1月1日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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