<シリーズ第2回>税務署は名義預金をどう見抜くのか──相続税調査で確認されるポイント

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前回は、名義預金とは何か、そしてなぜ相続税で問題になるのかという基本的な考え方を整理しました。
名義ではなく実質を見るという原則を理解すると、次に気になるのは「税務署は具体的に何を見て判断しているのか」という点ではないでしょうか。

相続税調査では、名義預金は偶然見つかるものではありません。
一定の情報や手順に基づいて、調査対象として浮かび上がってきます。

第2回では、相続税調査の現場で、税務署がどのような視点から名義預金を把握し、どこを確認しているのかを整理します。

名義預金はどの段階で浮上するのか

相続税調査では、まず被相続人の財産全体を把握することから始まります。
預貯金については、相続人が提出した申告書の内容だけでなく、金融機関への照会によって網羅的に確認されます。

この過程で、被相続人の生前の取引状況と、相続人や親族名義の口座の動きが照合されます。
その結果として、不自然な資金移動や、被相続人の生活実態と合わない預金残高が見つかると、名義預金の可能性が疑われます。

つまり、名義預金は「名義人の口座をたまたま見たら見つかる」のではなく、被相続人の資金の流れを追う中で浮上してくるものです。

金融機関照会で分かること

相続税調査では、金融機関に対する照会が行われます。
この照会により、被相続人名義の口座だけでなく、一定範囲の親族名義の口座についても、取引履歴が把握されます。

ここで注目されるのは、次のような点です。

  • 定期的に同額の入金があるか
  • 被相続人の口座から資金が移動していないか
  • 名義人の収入状況と預金残高が見合っているか

毎年ほぼ同じ時期に、同じ金額が入金されている場合、贈与を前提とした資金移動であることは推測されます。
問題は、その資金が本当に名義人に帰属しているかどうかです。

通帳・印鑑・キャッシュカードの所在

名義預金の判断で、極めて重視されるのが管理状況です。
税務調査では、通帳や印鑑、キャッシュカードを誰が保管し、誰が使える状態にあったのかが確認されます。

被相続人が通帳や印鑑をまとめて保管し、必要に応じて引き出しを行っていた場合、その預金は被相続人の管理下にあったと評価されやすくなります。
逆に、名義人が自分で管理し、被相続人が関与していなかったのであれば、贈与として成立していると説明しやすくなります。

この点は形式ではなく、実際の運用状況が問われます。

税務調査でよく出る質問

相続税調査では、名義預金に関して次のような質問がされることが多くあります。

  • この口座を開設したのは誰ですか
  • 通帳や印鑑は誰が管理していましたか
  • 引き出しや解約の判断は誰がしていましたか
  • この預金を自分のお金だと認識していましたか

これらの質問は、贈与の成立と管理・支配の実態を確認するためのものです。
回答の内容が曖昧であったり、相続人ごとに説明が食い違ったりすると、名義預金と認定されるリスクは高まります。

名義人が未成年の場合の見られ方

孫など未成年者名義の預金については、親権者が管理しているケースが多く見られます。
この場合、親権者による管理自体が直ちに名義預金を意味するわけではありません。

しかし、親権者を通じて被相続人が実質的に管理・支配していたと認められる場合には、名義預金と判断される可能性があります。
単に「子どもが小さいから親が管理していた」という説明だけでは足りず、その預金を誰の財産として扱っていたかが問われます。

結論

相続税調査において、名義預金は感覚や印象で判断されるものではありません。
被相続人の資金の流れ、預金の管理状況、名義人の認識といった具体的な事実を積み重ねた上で判断されます。

重要なのは、税務署がどこを見ているのかを知り、その視点で自分たちの状況を振り返ることです。
名義預金と指摘されるかどうかは、日常の管理や認識の積み重ねによって大きく左右されます。

次回は、実務でよく問題になる「名義預金と認定されるケース・されないケース」を具体的に整理します。

参考

・税のしるべ「第69回/名義預金」
・相続税調査実務における名義預金の取扱いに関する裁判例


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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