住宅ローンは、多くの人にとって人生最大の借金です。購入時には無理のない返済計画だと感じていても、長い返済期間の中では、収入や家族構成、健康状態など、さまざまな前提条件が変わっていきます。
日本経済新聞が報じた「住宅ローンの誤算」は、こうした現実を象徴する事例でした。本稿ではこの記事を手がかりに、住宅ローンの返済計画がなぜ崩れやすいのか、そして近年増えているリースバックという選択肢をどう考えるべきかを整理します。
住宅ローン計画に潜む三つの前提
住宅ローンを組む際、多くの人が暗黙のうちに三つの前提を置いています。
一つ目は、収入が長期間にわたり大きく落ち込まないという前提です。特に40代前後で住宅を購入する場合、その時点が年収のピークであるケースも少なくありません。
二つ目は、健康状態が維持され、働き続けられるという前提です。病気や体力低下は、収入に直結するリスクです。
三つ目は、社会や経済環境が大きく変わらないという前提です。景気後退や感染症、業界構造の変化などは、個人ではコントロールできません。
記事に登場する自営業の男性は、これら三つの前提が時間とともに崩れていきました。結果として、返済そのものが生活を圧迫する状況に陥っています。
長期返済と自営業リスク
35年返済という長期ローンは、月々の返済額を抑えられる一方、人生の後半まで債務が残るという特徴があります。
会社員であっても定年後の返済は負担ですが、自営業の場合はさらに不確実性が高まります。受注環境の変化、病気、景気後退がそのまま収入減少につながるためです。
また、記事の事例では教育費と住宅修繕費が同時期に重なっています。住宅ローンは「返済額」だけでなく、「将来発生する支出」との関係で考える必要があることが分かります。
リースバックという現実的な出口
返済が困難になったときの選択肢として、近年注目されているのがリースバックです。
リースバックとは、自宅を売却したうえで賃貸契約を結び、同じ家に住み続ける仕組みです。住宅ローンを完済し、住環境を急激に変えずに済む点が特徴です。
一方で、売却価格は市場価格より低くなることが多く、家賃の支払いが新たに発生します。また、将来的に住み続けられる保証期間や更新条件を十分に確認しなければなりません。
リースバックは「救済策」ではありますが、万能ではなく、あくまで数ある出口戦略の一つと捉える必要があります。
金利上昇時代に広がるリスク
国土交通省の調査によれば、分譲住宅購入者の平均借入額はこの10年で増加しています。そこに金利上昇が重なれば、返済余力の小さい世帯から影響を受けやすくなります。
住宅ローンは、借りられる額ではなく、変化に耐えられる額で考えることが重要です。収入が減った場合、金利が上がった場合、想定外の支出が生じた場合に、どこまで耐えられるかを事前に検証する必要があります。
結論
住宅ローンの最大のリスクは、返済期間の長さそのものにあります。購入時点の判断が間違っていなくても、環境の変化によって「誤算」になることは珍しくありません。
重要なのは、返済計画を固定的に考えず、途中で見直す前提で設計することです。そして、リースバックを含めた出口戦略を、困窮してからではなく、余力のあるうちに検討しておくことが、老後の生活を守ることにつながります。
参考
・日本経済新聞「<お金のリアル>住宅ローンの誤算(上)返済厳しくリースバックに」
・国土交通省「住宅市場動向調査」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

