70歳まで働く人が増えるなかで、年金と税金の関係を正しく理解することが重要になっています。
多くの人が誤解しているのは、年金は税金がかからない所得だと思われがちな点です。
しかし、公的年金は税法上「雑所得」として扱われ、給与などの所得と合算して課税されます。
つまり、高齢期に働く場合には、
- 年金
- 給与
- その他所得
が合算され、所得税や住民税の計算が行われます。
本稿では、高齢期就労と税制の関係を整理します。
公的年金は課税所得である
公的年金には主に次の二つがあります。
- 老齢基礎年金
- 老齢厚生年金
これらは税法上、
雑所得(公的年金等)
として扱われます。
ただし、給与所得と同じように「必要経費」に相当する控除が設けられています。
これが
公的年金等控除
です。
この控除は年齢と年金収入額によって異なります。
例えば、65歳以上の場合、
- 年金収入110万円までは課税所得0円
となる仕組みです。
年金と給与は合算して課税される
高齢期に働く場合、
- 年金所得
- 給与所得
はそれぞれ計算されたうえで合算されます。
例えば次のようなケースを考えます。
年金収入
150万円
給与収入
200万円
この場合、
- 年金は公的年金等控除
- 給与は給与所得控除
を適用したうえで、最終的な課税所得が計算されます。
したがって、働くことで税負担が増える場合があります。
年金だけなら非課税になる場合
年金受給者の多くは、
年金だけであれば税負担が小さい
という特徴があります。
例えば、65歳以上の人の場合、
- 公的年金等控除
- 基礎控除
などが適用されるため、
年金収入が比較的少ない場合には課税所得が発生しないこともあります。
しかし、給与所得が加わると課税所得が増える可能性があります。
年金受給者の確定申告
年金を受給している人は、必ずしも確定申告が必要とは限りません。
公的年金には
公的年金等の源泉徴収制度
があり、一定の条件を満たす場合は申告不要制度が適用されます。
申告不要制度の主な条件は次の通りです。
- 公的年金収入が400万円以下
- 年金以外の所得が20万円以下
この条件を満たす場合は、原則として確定申告は不要になります。
ただし、
- 医療費控除
- 生命保険料控除
- ふるさと納税
などを利用する場合には申告した方が有利になることもあります。
高齢期就労と社会保険料
高齢期に働く場合、税金だけでなく社会保険料も重要になります。
会社で働く場合、
- 健康保険
- 厚生年金保険
に加入することがあります。
その結果、
- 社会保険料負担
- 在職老齢年金
などの制度が関係してきます。
高齢期就労では、税金と社会保険の両方を考慮する必要があります。
高齢期就労は税制の前提になりつつある
日本の税制は、従来は
65歳前後で引退する社会
を前提に設計されていました。
しかし現在は、
- 人口減少
- 人手不足
- 平均寿命の延び
といった要因により、高齢期就労が一般化しつつあります。
そのため、
- 年金と給与の併存
- 高齢期の所得構造
を前提とした税制の議論も増えています。
例えば、
- 公的年金等控除の見直し
- 高齢者課税の再設計
などが政策議論のテーマになっています。
結論
70歳まで働く社会では、
- 年金
- 給与
- 税金
- 社会保険
の関係を理解することが重要になります。
公的年金は非課税所得ではなく、給与などと合算して課税されます。
そのため、高齢期就労では税負担の構造が変わる可能性があります。
今後は、
働きながら年金を受け取る社会
が一般化すると考えられます。
そのなかで、年金と税制の仕組みを理解することは、老後の生活設計を考えるうえで欠かせない要素と言えるでしょう。
参考
日本経済新聞「70歳以降も働く」初の4割 郵政世論調査(2026年3月12日朝刊)
