高市政権と「期待相場」―― 株高は政策を先取りしているのか ――

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2025年の日本株高を語る際、避けて通れないのが政権運営への評価です。
日経平均株価が史上初めて5万円台に到達した局面では、インフレ定着やAI投資と並び、政権交代後の経済運営に対する期待が株価を押し上げたとの見方が広がりました。

株式市場は常に未来を織り込みます。政策が実行される前から、期待や不安が価格に反映されるのが特徴です。本稿では、2025年の日本株がどのように政権の経済政策を評価してきたのか、いわゆる「期待相場」という視点から整理します。


政権発足と市場の反応

2025年秋、政権交代を受けて株式市場は敏感に反応しました。
成長投資を重視する姿勢や、産業政策を前面に打ち出す方針が示されると、日経平均株価は最高値を更新しました。市場は、新政権の経済運営が「停滞からの脱却」を本気で目指していると受け止めたと考えられます。

この段階では、具体的な政策の成果が表れたわけではありません。株価上昇は、あくまで将来への期待を先取りした動きでした。これは、株式市場が政策の「実績」よりも「方向性」を重視することを示しています。


積極財政と成長期待

新政権の経済運営の特徴として挙げられるのが、積極財政を通じた成長重視の姿勢です。
供給能力の底上げや先端分野への投資を通じて、名目成長を実現するという考え方は、インフレ定着局面では理にかなった側面があります。

市場が好感したのは、短期的な景気刺激策ではなく、産業基盤や供給網の強化に重点を置く姿勢でした。AI、半導体、エネルギー、防衛関連などへの投資は、単なる需要創出ではなく、生産性や付加価値の向上につながる可能性があります。

こうした分野への政策的後押しが、企業の設備投資意欲を高め、株価の上昇につながった面は否定できません。


期待相場の光と影

もっとも、期待相場には常に二面性があります。
期待が高まるほど、現実がそれに追いつかなかった場合の失望も大きくなります。政策の実行力や財源の裏付けが不十分であれば、市場の評価は一転する可能性があります。

特にインフレ局面では、積極財政が物価上昇を加速させるリスクが意識されます。成長につながらない財政支出は、実質的な国民負担の増加や通貨価値の低下を招きかねません。市場は、成長と財政規律のバランスを厳しく見ています。


海外投資家の視線

2025年、日本株市場に流入した海外資金は大きな規模となりました。
海外投資家が注目しているのは、個々の政策よりも、日本経済全体の方向性です。インフレが定着し、名目成長が続くのか。その中で、政府が市場との対話を重視した政策運営を行えるのかが問われています。

海外マネーは、期待が持続すると判断すれば流入を続けますが、信認が揺らげば一気に引き揚げる性質も持っています。政権運営に対する評価は、国内以上にシビアである点に注意が必要です。


政治と株価の距離感

株高が続くと、政治と市場の距離感が問題になります。
株価上昇が政権支持の根拠として語られる一方で、政策判断が市場の短期的な反応に左右される危険性もあります。

本来、経済政策は中長期の視点で設計されるべきものです。市場の期待に応え続けることだけを目的とすれば、財政規律や制度改革が後回しにされる可能性があります。株価は重要なシグナルですが、それ自体が政策の目的になるわけではありません。


結論

2025年の日本株高には、政権運営への期待が確かに織り込まれていました。
積極的な成長戦略や産業政策への評価が、インフレ定着という環境変化と重なり、株価を押し上げたと考えられます。

一方で、期待相場は持続性を保証するものではありません。今後、市場が求めるのは、期待を裏切らない政策の実行力と、財政や金融を含めた整合的な経済運営です。

次回は、こうした期待相場の行方を左右する「市場信認」に焦点を当てます。円安、金融政策、財政規律という三つの難所を、どのように乗り越えられるのかを整理します。


参考

・日本経済新聞「インフレ定着、際立つ株高」
・日本経済新聞「市場信認『3つの難所』 止まらぬ円安、政権運営にリスク」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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