企業の文書管理は近年大きく変化しています。
従来は紙の書類をファイルや倉庫で保存する方法が一般的でしたが、現在は電子データによる保存が急速に広がっています。
その背景にあるのが電子帳簿保存法です。
この法律は、帳簿や取引書類を電子データとして保存するためのルールを定めたものです。
特に2020年代の制度改正により、電子取引データの保存が義務化され、企業の文書管理のあり方は大きく変わりました。
本稿では、電子帳簿保存法の基本と電子保存の実務上のポイントを整理します。
電子帳簿保存法とは何か
電子帳簿保存法は、帳簿や書類を電子データとして保存する方法を定めた法律です。
企業が扱う税務関係の帳簿や書類は、本来は紙で保存することが原則とされています。しかし、一定の要件を満たす場合には電子データとして保存することが認められています。
電子帳簿保存法には、大きく三つの制度があります。
電子帳簿等保存
スキャナ保存
電子取引データ保存
それぞれ対象となる書類や保存方法が異なります。
電子帳簿等保存制度
電子帳簿等保存制度は、帳簿や決算書類などを電子データのまま保存する制度です。
例えば会計ソフトで作成した次のような帳簿が対象になります。
仕訳帳
総勘定元帳
補助簿
決算書類
これらの帳簿は、紙に印刷して保存することが原則ですが、一定の要件を満たす場合には電子データのまま保存することができます。
電子帳簿保存では次のような要件が求められます。
訂正や削除の履歴が確認できること
帳簿内容を画面や印刷で確認できること
税務調査時にデータを提示できること
これらの要件は、帳簿データの改ざん防止と確認可能性を確保するためのものです。
スキャナ保存制度
スキャナ保存制度は、紙の書類をスキャンして電子データとして保存する制度です。
対象となる書類には次のようなものがあります。
領収書
請求書
契約書
見積書
注文書
納品書
紙で受け取った書類をスキャナやスマートフォンで読み取り、電子データとして保存することができます。
ただしスキャナ保存には厳しい要件があります。
主な要件は次のとおりです。
速やかな入力
タイムスタンプの付与
訂正削除履歴の管理
検索機能の確保
また、スキャンデータは一定以上の解像度で読み取り、ディスプレイやプリンタで内容を確認できる状態で保存する必要があります。
これらの要件は、電子化された文書の信頼性を確保するために設けられています。
電子取引データ保存制度
現在の電子帳簿保存法で最も重要なのが電子取引データ保存制度です。
電子取引とは、取引情報を電子データでやり取りする取引を指します。
代表的な例は次のとおりです。
メールで受け取る請求書
PDFの領収書
EDI取引
インターネット上の取引データ
クラウドサービス上の請求書
これらはすべて電子取引に該当します。
電子取引では、受領した電子データを紙に印刷して保存することは認められていません。電子データのまま保存する必要があります。
つまり、メールで受け取った請求書を印刷して保存するだけでは保存義務を満たさないことになります。
電子取引データの保存には次の要件があります。
改ざん防止の措置
データの検索機能
ディスプレイやプリンタによる確認
改ざん防止措置としては、タイムスタンプの付与や訂正履歴が残るシステムの利用、事務処理規程の整備などの方法が認められています。
電子保存の実務上のポイント
電子帳簿保存法への対応では、単にデータを保存するだけでは不十分です。
実務では次の点が重要になります。
電子取引データの保存ルールを整備する
保存場所を統一する
検索できる状態で保存する
データ消失を防ぐバックアップを行う
また税務調査では、電子取引データの提示やダウンロードを求められることがあります。そのため、必要なデータをすぐに取り出せる状態で管理しておくことが重要です。
電子保存は紙の保管スペースを削減できる一方で、データ管理のルールが不十分だと逆に管理が混乱する可能性があります。
そのため、社内の文書管理ルールを整備することが重要になります。
結論
電子帳簿保存法の改正により、企業の文書管理は大きく変化しました。
特に電子取引データの保存義務は、すべての企業に影響する重要な制度です。
電子帳簿保存法では
電子帳簿等保存
スキャナ保存
電子取引データ保存
の三つの制度があり、それぞれ異なる要件が定められています。
電子保存を適切に行うためには、保存ルールの整備とデータ管理体制の構築が不可欠です。
電子化の進展により、企業の文書管理は今後さらに変化していくと考えられます。制度の内容を正しく理解し、実務に対応していくことが重要になります。
参考
日本実業出版社
企業実務2026年3月号付録
安田大
2026年版 帳票・書類の法定保存年限と電子保存の実務
