企業が株式を取得する目的はさまざまです。短期的な売買益を狙う場合もあれば、取引関係の維持・強化や長期的な投資を目的として株式を保有する場合もあります。
会計処理において重要なのは、株式を保有する目的です。保有目的によって使用する勘定科目や決算時の評価方法が変わるためです。
本稿では、長期保有目的で株式を取得した場合の会計処理について整理します。取得時、売却時、そして株価が下落した場合の減損処理まで、実務の基本を確認します。
株式の保有目的による区分
会計上、有価証券は保有目的によっていくつかの区分に分けられます。代表的な区分は次のとおりです。
・売買目的有価証券
・満期保有目的の債券
・子会社株式・関連会社株式
・その他有価証券
長期保有目的で取得する一般的な株式は、多くの場合「その他有価証券」に分類されます。
この場合、貸借対照表では「投資その他の資産」の区分に表示され、「投資有価証券」として処理されます。短期売買を目的とする株式とは扱いが異なり、企業の資産として中長期的に保有する投資として位置付けられます。
株式を取得したときの会計処理
長期保有目的で株式を取得した場合は、取得原価で資産計上します。
取得原価には株式の購入金額だけでなく、次のような付随費用も含めます。
・購入手数料
・取引手数料
・その他取得に直接要した費用
例えば、取引先の株式を1,000,000円で購入し、購入手数料が10,000円(税別)であった場合の仕訳は次のようになります。
借方
投資有価証券 1,010,000
仮払消費税等 1,000
貸方
普通預金 1,011,000
このように、手数料は株式の取得原価に含めて処理する点が重要です。株式の購入金額だけを資産計上してしまうミスは実務でも見られるため、注意が必要です。
株式を売却したときの処理
長期保有していた株式を売却する場合には、帳簿価額との差額を売却損益として処理します。
例えば、取得原価が1,010,000円の株式を1,300,000円で売却し、売却手数料が10,000円(税別)差し引かれて普通預金に入金された場合、仕訳は次のようになります。
借方
普通預金 1,289,000
仮払消費税等 1,000
貸方
投資有価証券 1,010,000
投資有価証券売却益 280,000
このように、売却価額から帳簿価額を差し引いた差額が売却益として計上されます。
株価が下落した場合の減損処理
長期保有目的の株式であっても、株価が大きく下落した場合には減損処理が必要になります。
期末時点で時価が著しく下落し、回復の見込みがないと判断される場合には、その時価まで帳簿価額を引き下げ、評価損を計上します。
例えば、取得価額1,000,000円の株式の期末時価が400,000円となり、回復の見込みがないと判断された場合、次の仕訳を行います。
借方
投資有価証券評価損 600,000
貸方
投資有価証券 600,000
この処理は減損処理と呼ばれ、評価差額は当期の損失として計上されます。長期保有を前提としている株式であっても、価値が大きく下落した場合には適切に損失処理を行う必要があります。
結論
長期保有目的の株式は、短期売買目的の株式とは異なる会計処理が求められます。
取得時には付随費用を含めた取得原価で「投資有価証券」として計上し、売却時には帳簿価額との差額を売却損益として処理します。また、株価が著しく下落し回復の見込みがない場合には減損処理を行う必要があります。
株式の会計処理は「保有目的」によって決まります。実務では、株式を取得する際にその目的を明確にし、それに応じた会計処理を行うことが重要になります。
参考
企業実務 2026年3月号
「なるほど納得 勘定科目 長期的に保有する目的の株式を購入したり、売却したときは?」(駒井伸俊)

