金融市場のニュースでは、しばしば「金利が上昇したため国債価格が下落した」という表現が用いられます。この関係は金融市場の基本的な原理ですが、初めて学ぶ人にとっては直感的に理解しにくいものでもあります。
なぜ金利が上がると国債価格は下がるのでしょうか。
そして、金利とはそもそも何を意味しているのでしょうか。
本稿では、日本国債を例に、金利と価格の関係を整理しながら、その仕組みを理解していきます。
金利とは「投資のリターン」である
まず最初に整理しておきたいのは、金利の意味です。
金利とは、国債を保有することで得られる年率のリターンを示しています。
例えば、利率2%の10年国債を考えてみます。仮に額面を100円とすると、この国債を保有すると毎年2円の利息が支払われます。10年間保有すれば合計20円の利息を受け取ることになります。
そして満期になると、最初に投資した100円が償還されます。
このように、満期まで保有した場合の年間リターンが「金利」です。
ここで重要なのは、金利は満期まで保有することを前提とした収益率であるという点です。
国債は途中で売買できる
実際の国債は、発行された後も市場で売買されています。
これを「流通市場」と呼びます。
国債を購入した投資家は、満期まで保有する必要はありません。途中で売却することもできます。そのため、国債の価格は株式と同様に日々変動します。
例えば、次のようなケースを考えてみます。
・100円で購入した国債を
・110円で売却できた
この場合、利息に加えて売却益も得ることになります。
一方で、価格が下がって90円で売却すれば、損失が発生します。
つまり、途中売却する場合のリターンは、売却価格によって変わることになります。
金利と価格はなぜ逆に動くのか
金利と価格の関係を理解するためには、「投資の利回り」という考え方が重要です。
例えば、毎年2円の利息がもらえる国債があるとします。
この国債を100円で購入した場合、利回りは
2円 ÷ 100円 = 2%
となります。
しかし、もしこの国債の価格が120円に上昇したとしましょう。
すると利回りは
2円 ÷ 120円 = 約1.67%
に低下します。
逆に、価格が80円に下がれば
2円 ÷ 80円 = 2.5%
となり、利回りは上昇します。
つまり、
・価格が上がる → 利回り(=金利)は下がる
・価格が下がる → 利回り(=金利)は上がる
という関係が生まれます。
このため金融市場では「金利と価格は逆に動く」と表現されます。
不動産投資で考えると理解しやすい
この関係は、不動産投資に置き換えると理解しやすくなります。
仮に、年間家賃収入が100万円の物件があるとします。
この物件を
・2000万円で購入すれば利回りは5%
・2500万円で購入すれば利回りは4%
となります。
同じ収入でも、購入価格が高くなれば利回りは下がります。
国債もこれと同じ構造です。
国債の場合、将来受け取る利息は決まっています。そのため、購入価格が変われば投資の利回りも変化します。
「金利が上がるから価格が下がる」のではない
金融ニュースでは、しばしば次のように説明されます。
金利が上がったため国債価格が下落した
しかし、厳密に言えば、これは説明の便宜上の表現にすぎません。
実際には
価格と金利は同時に決まります。
市場参加者が国債を売買する過程で、
・価格
・利回り(金利)
は表裏一体として決定されます。
つまり、どちらが先という関係ではありません。
価格が変わること自体が、利回りを変えているのです。
結論
国債を理解する上で最も重要なポイントの一つが、金利と価格の関係です。
金利とは、国債投資から得られるリターンを示す指標です。そして、国債の利息は発行時点で決まっているため、購入価格が変わると利回りも変化します。
その結果として、
国債価格が上昇すれば金利は低下し、価格が下落すれば金利は上昇する
という関係が生まれます。
金融市場のニュースで語られる金利の動きも、この基本的な仕組みの上に成り立っています。国債市場を理解するためには、まずこの「価格と金利は表裏一体である」という原理を押さえることが重要です。
参考
日本経済新聞 朝刊
やさしい経済学「初歩から学ぶ日本国債(4) 金利と価格は表裏一体」
東京大学特任准教授 服部孝洋
2026年3月4日発行

