金利と企業の損益 ― お金を借りる・貸すで生まれる数字の意味

会計
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前回は「為替差損益」について取り上げました。今回は、企業の財務に大きな影響を与えるもう一つの要素「金利」です。普段の生活でも住宅ローンやカードローンなどで「金利」という言葉はなじみ深いですよね。企業会計における金利の動きも、基本は同じ仕組みです。


金利は「お金のレンタル料」

金利は一言でいえば「お金を借りるためのレンタル料」です。借りた金額に応じて、一定の割合で利息を支払う必要があります。企業にとっても同じで、銀行などから資金を借りれば「支払利息」、逆に余裕資金を預けたり貸したりすれば「受取利息」として決算に表れます。


企業の決算にどう出てくるのか?

1. 支払利息

企業が銀行から資金を借りた場合、利息を支払います。損益計算書では「営業外費用」として計上され、利益を押し下げる要因になります。

2. 受取利息

余裕資金を預金したり、有価証券で運用していれば利息を受け取ります。これは「営業外収益」として計上され、利益を押し上げます。

つまり、企業がどれだけお金を借りているか、逆にどれだけ余裕資金を運用しているかで、金利の影響度合いが変わるわけです。


金利上昇で得する企業・損する企業

ここ数年、世界的に金利が動いています。日本も長らく超低金利でしたが、少しずつ変化が出てきました。金利の変動は企業業績にどう響くのでしょうか?

  • 借金が多い企業
    → 金利上昇は負担増。支払利息が膨らみ、利益を圧迫します。
  • 預金や投資余力が大きい企業
    → 金利上昇で受取利息が増え、利益が増える効果があります。

例えば、資金を大量に借りて設備投資をしている製造業は金利上昇に敏感です。一方、金融資産を多く持つ大企業や、内部留保を厚く積んでいる企業は金利上昇で有利になることもあります。


「利息以外の金利影響」もある

金利は単に利息の計算だけでなく、企業の評価額や投資判断にも影響します。

  • 社債の発行コスト
    企業が市場からお金を借りるとき、金利が高ければ調達コストが増します。
  • 将来価値の割引
    企業会計では「将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く」計算をしますが、この割引率には金利が使われます。金利が高いほど現在価値は小さくなります。

つまり、金利は単なる「利息」だけでなく、企業の投資判断や財務評価そのものに直結しているのです。


実際の決算数字にどう反映されるか

例えばトヨタやソニーなどの有価証券報告書を見ると、「営業外収益・費用」の中に「受取利息」「支払利息」といった項目があります。これがまさに金利による損益です。

2024年度の決算では、日米欧の金利差を背景に、ドル建ての資産運用をしている企業が受取利息を大きく増やしました。一方、海外で資金を借りている企業は支払利息が膨らみました。数字の裏には「金利の動き」が潜んでいるのです。


投資家が注目すべきポイント

投資家や経済ニュースを読む人にとっては、次の視点を持つと理解が深まります。

  • この企業は借金が多いのか、資産が多いのか?
  • 金利上昇で有利になるのか、不利になるのか?
  • 利益の増減は本業の成長なのか、それとも金利環境の変化によるものか?

数字をただ眺めるのではなく、「なぜこの利益が出ているのか?」を考えると、企業の姿が見えてきます。


まとめ:金利は「見えない影響力」

金利は普段あまり意識されないかもしれませんが、企業会計の裏では大きな存在感を持っています。借入の多い企業は金利上昇で苦しくなり、逆に資産を多く持つ企業は恩恵を受ける。まさに「金利ひとつで立場が逆転する」こともあるのです。

これから金融政策が転換する局面では、ニュースに出てくる企業の決算数字も、金利の影響を意識して見るとぐっと理解しやすくなります。


👉 次回(第3回)は「投資有価証券の評価」について解説します。企業が保有する株式の評価替えが、損益にどう表れるのかを取り上げます。


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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