配偶者がいる場合の施設選択設計 ― 「本人の介護」だけで決めないための整理

FP
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施設選びは、
本人の要介護度や月額費用だけで判断されがちです。

しかし、配偶者がいる場合、問題は一人分の介護ではありません。

本人の施設費と同時に、
配偶者の生活費、住まいの維持、
そして将来の二人目の介護まで視野に入れる必要があります。

本人に合う施設を探すだけでは、
家計全体の安定は確保できません。

本稿では、夫婦単位で考える施設選択の設計視点を整理します。

配偶者がいると、判断軸が一気に増えます

施設選びは「本人に合うか」「空きがあるか」「月額はいくらか」で進みがちです。
ただ、配偶者がいる場合は、本人の介護ニーズと同じくらい 配偶者の生活の持続性 が重要になります。

同じ月15万円でも、配偶者が自宅で暮らし続けるのか、同居が続くのか、将来配偶者も介護が必要になるのかで、選ぶべき施設タイプや優先順位が変わります。


設計の出発点は「同居を続ける前提が崩れる瞬間」

配偶者がいる家庭で、施設入所が現実になる典型のきっかけは次の3つです。

1)配偶者の介護負担が限界を超える

介護の重さは、本人の要介護度だけで決まりません。
夜間対応、徘徊、移乗、排泄介助が重なると、同居家族の体力・睡眠が先に崩れます。

2)配偶者が「支える人」から「支えられる人」になる

配偶者が持病や加齢で通院が増えた瞬間、在宅介護の前提が崩れます。
この場合、本人だけの入所ではなく、将来の“二人分の介護”を想定した設計が必要です。

3)住まいが介護に耐えない

段差、浴室、トイレ動線、冬の寒さ、地域の支援体制。
住宅改修で対応できる範囲を超えると、施設は「最後の手段」ではなく「現実的な選択肢」になります。


配偶者がいる場合の施設選択:4つの基本パターン

パターンA:本人のみ入所、配偶者は自宅で生活継続

最も多い形です。ここで重要なのは 二重生活コスト です。

・本人:施設費(居住費+食費+介護自己負担 等)
・配偶者:自宅の住居費、光熱費、固定資産税、生活費

「本人の年金で施設費が賄えるか」だけでなく、
配偶者の生活費が残るか を必ず確認します。

特に注意したいのは、本人の年金を施設に寄せすぎて、配偶者の生活が痩せる設計です。
配偶者側が資産を取り崩す形になると、長期化したときに家計が崩れやすくなります。


パターンB:在宅を維持しつつ、ショートステイ等で“息継ぎ”を確保

すぐに入所ではなく、
・ショートステイ
・デイサービス
・訪問介護
を組み合わせて、配偶者の負担を下げる設計です。

このパターンは「配偶者が倒れない」ことが最優先です。
費用を抑えるためにサービス量を削りすぎると、結局は急転直下で入所や入院になり、むしろ総費用が増えます。


パターンC:本人は老健で立て直し → 在宅復帰か特養・有料へ

退院直後など、急に在宅が難しくなった局面で有効です。
老健はリハビリで機能回復を狙えるため、配偶者が在宅介護を継続できる水準まで戻せるか を見極める場になります。

ここでの設計ポイントは、「老健をゴールにしない」ことです。
3~6カ月を一つの節目として、次の行き先(在宅/特養/有料/介護医療院)を早めに描きます。


パターンD:将来を見据えて“同一法人内で移れる”導線を作る

本人の医療ニーズが上がる可能性がある場合、
特養 → 医療依存が高まったら介護医療院や病院へ
という移行が必要になることがあります。

配偶者が高齢の場合は、転所を繰り返すこと自体が大きな負担です。
「医療対応がどこまで可能か」「状態変化時にどうなるか」を、最初から確認しておく方が安全です。


公的施設と民間施設、配偶者目線での違い

配偶者がいる場合、特養・老健・介護医療院・有料老人ホームの比較は「本人の快適さ」だけでは足りません。配偶者の生活設計に直結する観点は次のとおりです。

1)費用の読みやすさ

・特養:補足給付の有無で差が大きい
・有料:料金体系が多様(入居一時金型/月額型/上乗せ介護 等)

配偶者が家計管理を担うケースも多いため、
長期で見通せる料金か を重視します。

2)面会・通いやすさ

配偶者が定期的に通う前提なら、距離は“費用”と同じくらい重要です。
交通費、移動疲れ、冬の移動、駐車場、面会時間。
これらは継続性を左右します。

3)“配偶者の将来”への備え

本人が入所したあと、配偶者が要介護になったときの選択肢をどうするか。
同じ施設に入れるのか、近隣に受け皿があるのか。
この視点が抜けると、数年後にもう一度同じ苦労をすることになります。


家計設計のコツ:「本人の費用」+「配偶者の最低生活費」から逆算する

配偶者がいる場合の基本はシンプルです。

  1. 配偶者の最低生活費(住居費+生活費+医療費)を先に確保
  2. 残りで本人の施設費を賄えるかを確認
  3. 足りない分を資産取り崩しで補う場合、何年持つかを試算

ここで合わせて確認したい制度が次の3つです。

・介護保険の自己負担割合(1~3割)
・高額介護サービス費(上限管理)
・高額医療・高額介護合算療養費(医療と介護の合算)

制度の上限が効くかどうかで、月々のブレが小さくなります。


施設選択のチェックリスト(配偶者がいる家庭向け)

最後に、判断を外しにくくするための確認項目をまとめます。

・配偶者が無理なく通える距離か
・本人の年金だけで施設費が賄えるか(難しければ資産で何年持つか)
・配偶者の生活費が確保される設計か
・補足給付の対象になり得るか(資産判定の対象範囲も含めて)
・状態悪化時の転所・入院の扱いが明確か
・配偶者が将来要介護になった場合の受け皿があるか
・在宅に戻る可能性があるなら、住宅改修とサービス量の上限を把握しているか


結論

配偶者がいる場合、施設選びは「本人に合う施設」を探すだけでは不十分です。
本質は、本人の介護が始まっても、配偶者の生活が続く設計を作れるか にあります。

本人の介護は長期化し得ます。さらに、配偶者自身も高齢であれば、数年後に“二人目の介護”が始まる可能性も現実的です。
費用・距離・医療対応・将来の受け皿まで含めて、家族単位で選択肢を組み立てることが重要です。


参考

・厚生労働省「介護保険制度の概要」公表資料(随時更新)
・厚生労働省「高額介護サービス費」「高額医療・高額介護合算療養費」制度説明資料(随時更新)
・日本FP協会 会員向けコラム 畠中雅子「介護・施設」第3回(公的施設の解説)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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