都市部の固定資産税はなぜ歪むのか―価格高騰と制度設計の衝突

税理士
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固定資産税は全国一律の制度でありながら、その負担の実態は地域によって大きく異なります。特に都市部では、同じ制度のもとであっても税負担が重くなりやすく、「歪み」が顕在化しやすい特徴があります。

なぜこのような現象が生じるのでしょうか。本稿では、都市部における固定資産税の構造的な問題を整理します。


都市部で税負担が重くなる理由

都市部の固定資産税が重くなる最大の理由は、評価額が高いことにあります。

評価額は市場価格に連動して決まるため、

  • 需要が集中する都市部
  • 再開発やインフラ整備が進む地域
  • 投資資金が流入するエリア

では、資産価値が上昇し、それに伴って評価額も上がります。

結果として、同じ面積の土地や建物であっても、地方と比べて税負担が大きくなります。


価格高騰と所得の非連動

ここで問題となるのが、資産価格と所得の関係です。

都市部では、

  • 地価や不動産価格は上昇する
  • しかし個人の所得は必ずしも同じように増えない

という状況が一般的です。

このため、

  • 評価額は上がる
  • 税負担も上がる
  • しかし支払能力は変わらない

というズレが生じます。

これは、前回整理した「担税力の乖離」が、都市部でより強く現れている状態といえます。


居住用不動産という特殊性

さらに、都市部の問題を複雑にしているのが、居住用不動産の存在です。

多くの住宅は、

  • 収益を生まない
  • 売却を前提としていない
  • 生活の基盤として保有されている

という特徴を持ちます。

しかし固定資産税は、

  • 収益の有無を問わない
  • 市場価格に基づいて課税される

ため、居住用であっても価格が上昇すれば税負担は増加します。

ここに、制度と生活実態とのズレが生じます。


長期保有者ほど不利になる構造

都市部では、長期間同じ場所に住み続けている人ほど、この問題の影響を受けやすくなります。

例えば、

  • 昔は安かった土地に住み続けている
  • 周辺の再開発で地価が上昇した
  • しかし本人の収入は変わらない

というケースです。

この場合、資産価値の上昇は「含み益」にすぎず、実際のキャッシュフローには反映されません。それにもかかわらず、税負担は増加します。

結果として、「売却しない限り利益を得ていないにもかかわらず課税される」という状況が生まれます。


負担調整は歪みを解消しているのか

現行制度では、負担調整措置や住宅用地特例によって、一定の緩和が図られています。

しかし都市部では、

  • 価格上昇のスピードが速い
  • 評価額の上昇が大きい

ため、これらの調整だけでは十分に対応できない場合があります。

また、負担調整はあくまで「増加を緩やかにする」仕組みであり、根本的な問題を解決するものではありません。


制度設計と現実の衝突

ここまでを整理すると、都市部の歪みは次のような構造から生じています。

  • 評価は市場価格に連動する
  • 課税は毎年行われる
  • 所得や収益とは無関係
  • 居住用資産にも同様に適用される

この結果、

  • 資産価値の上昇がそのまま税負担に反映される
  • しかし担税力はそれに連動しない

という構造が生まれます。

これは制度の欠陥というよりも、「市場価格連動型評価」と「保有課税」という組み合わせから必然的に生じる問題といえます。


都市部の歪みは解消できるのか

この問題を解消するための方向性としては、いくつかの考え方があり得ます。

  • 評価を市場価格から切り離す
  • 税率を引き下げる
  • 居住用資産への課税を見直す
  • 所得との連動を強める

しかし、いずれの方法にも制度的な課題があります。

例えば、評価を引き下げれば公平性が損なわれ、所得連動にすれば固定資産税の性格そのものが変わります。

そのため、現行制度は大きな変更を避け、調整措置によって対応しているのが実情です。


結論

都市部における固定資産税の歪みは、偶発的な問題ではなく、制度の構造から生じる必然的な結果です。

市場価格に基づく評価と、保有に対する課税という仕組みの組み合わせは、資産価値の上昇がそのまま税負担に反映される構造を持っています。

しかし、その負担は必ずしも所得や支払能力と一致せず、特に都市部ではそのズレが顕著になります。

固定資産税を理解する上では、この「価格と担税力の乖離」がどこで、なぜ生じるのかを捉えることが重要です。


参考

税のしるべ 2026年3月23日
連載「続・傍流の正論~税相を斬る」第83回(品川芳宣)

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