遺言書の基本と“もめない書き方”──財産よりも、想いをどう残すか

税理士
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■ 1.なぜ今、遺言書が大切なのか

「うちは大した財産がないから、遺言書なんていらない」と思っていませんか?
実は、遺言書があるかどうかで相続のトラブル発生率は大きく変わるといわれています。

法務省の統計では、遺産分割で揉めた家庭のうち、
3分の2以上が「遺言書がなかったケース」です。

つまり、金額の多い少ないではなく、

💬 “家族への気持ちをどう伝えるか”
が、相続を円満に進める最大のカギなのです。


■ 2.遺言書があると、こんなに違う

遺言書があるだけで、相続手続きのスピードと安心感が全く変わります。

項目遺言書なし遺言書あり
遺産分割協議相続人全員の合意が必要協議不要(内容どおり実行)
手続き期間数か月〜数年かかることもすぐに実行可能
トラブル発生率高い低い

🗝 遺言書は“家族を守る最後の手紙”です。


■ 3.遺言書の3つの種類を知ろう

遺言書には、大きく3つのタイプがあります。

種類特徴メリットデメリット
自筆証書遺言すべて自分で書く手軽・費用ゼロ書き方ミスで無効になることも
公正証書遺言公証役場で作成法的に確実・原本保管費用がかかる(数万円〜)
秘密証書遺言内容を秘密にできるプライバシー確保手続きが複雑・利用少ない

最近は、法務局で自筆遺言を預かってくれる
「自筆証書遺言書保管制度」(2020年開始)も普及しています。

💡「書きやすさ」と「確実性」で選ぶなら、公正証書遺言が安心です。


■ 4.“もめない遺言書”に共通する3つのポイント

① 書き方より「伝え方」

法律的に正しいだけでなく、誰が読んでも納得できる説明を添えること。
「なぜこの分け方にしたのか」「誰に何を託したのか」を一言添えるだけで、印象は大きく変わります。

② 財産の内容を正確に

「預金」「不動産」「保険」などをざっくり書くのではなく、
銀行名・支店・口座番号・地番・登記簿など、具体的に特定できる記載を。

③ 予備の人(予備的遺言)も決めておく

もし受け取る人が先に亡くなっていた場合に備えて、
「第二順位の受取人」も書いておくとトラブルを防げます。


■ 5.家族に“ありがとう”を伝える「付言事項」

法律上の効力はありませんが、
遺言の最後に「付言(ふげん)事項」を添えることで、
家族に想いを伝えることができます。

💬 例)
「これまで家族を支えてくれてありがとう。
みんなで仲良く力を合わせて生活していってほしい。」

こうしたひと言が、相続争いを防ぐ最大の力になります。


■ 6.生命保険・不動産・預金の書き方ポイント

財産の種類書き方のコツ注意点
預貯金銀行・支店・口座番号を明記「全財産」では特定不十分
不動産所在・地番・家屋番号を記載固定資産評価証明書で確認
生命保険契約会社名・証券番号・受取人受取人は遺言書より保険契約が優先
株式・投資信託証券会社名・銘柄・口座番号相続時の名義変更に注意

■ 7.“公正証書遺言”の流れをイメージしてみよう

1️⃣ 公証役場に相談(予約制)
2️⃣ 公証人・証人2名立会いで作成
3️⃣ 原本を公証役場で保管、副本を本人が受領

費用は財産総額に応じて数万円〜十数万円ほど。
弁護士や税理士、FPと連携すれば、
税金面を踏まえた実効性のある遺言が作れます。

💬 特に不動産や株式など評価の難しい財産を持つ方は、
公正証書遺言を強くおすすめします。


■ 8.まとめ:もめない遺言は“愛情の見える遺言”

ポイント内容
作成の目的家族への感謝と安心を形にする
書き方の選択公正証書遺言が確実で安全
注意点財産の特定と説明文を忘れずに
想いの伝え方付言事項で「ありがとう」を残す

💬 最後に

遺言書は「死後の手続き」ではなく、

“生きている今、家族を思うための手紙”です。

たとえ小さな財産でも、遺言書ひとつで家族の未来は変わります。
「何を書くか」よりも、「誰のために書くか」——。
それを考える時間こそが、最高の相続対策です。


参考資料

  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」案内ページ
  • 国税庁「相続税の申告要否と遺言の影響」
  • 日本公証人連合会「公正証書遺言作成の手引き」
  • 東京税理士会 令和7年度研修資料(塩野入文雄講師)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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