連続M&Aがつくる新しい企業成長モデル

経営

企業の成長といえば、かつては自社内の設備投資や人材育成による「自前主義」が王道でした。

しかし近年、日本企業のM&A件数は急増し、2025年には年間5000件を超え、2年連続で過去最高を更新しました。

人手不足、後継者難、国内市場の成熟といった構造的課題を背景に、企業は「連続M&A」によって成長の活路を見いだしています。

本稿では、複数企業の事例をもとに、連続M&Aがどのように企業価値を高めているのか、その戦略的意味を整理します。

1 人手不足を逆手に取る再編戦略

物流業界ではトラックドライバー不足が深刻です。この逆風を成長機会と捉えたのが、SBSホールディングスです。同社は上場以降40件超のM&Aを実施し、大手メーカーの物流子会社などを取り込んできました。

メーカーにとって物流部門は「コストセンター」と位置づけられがちですが、SBSは買収後に倉庫や車両へ積極投資を行い、業務効率化と営業機能の強化によって収益力を高めています。既存社員を営業部門に再配置するなど、組織再設計も同時に進める点が特徴です。

単なる規模拡大ではなく、「業界再編のハブ」としての役割を担うことで競争優位を築いています。株価の上昇は、市場がその戦略を評価していることを示しています。

2 後継者難を成長機会に変えるモデル

中小企業の後継者不足は日本経済の大きな課題です。ヨシムラ・フード・ホールディングスは、こうした企業の受け皿となることで成長してきました。

同社はホタテ加工会社などを買収し、海外の高級寿司市場をターゲットに販路を拡大しています。単一商品に依存せず、魚種の横展開を図ることで付加価値を高める戦略です。M&Aは単なる救済ではなく、「ブランドと販路の統合」による利益成長を目指しています。

また、廃棄物処理業界では大栄環境が30社以上を買収し、赤字企業を立て直してきました。高度成長期に創業した企業の世代交代が進む中、再編の受け皿として機能しています。買収後の黒字化までの明確な時間軸を示している点が、投資家の信頼を集めています。

3 海外M&Aによる成長軸の転換

国内市場の成長が限定的ななか、海外へ成長軸を移す企業もあります。KPPグループホールディングスは国内合併を重ねた後、オーストラリア企業を買収し、海外M&Aを本格化しました。

約30社の買収を経て売上高は海外が上回り、営業利益は大幅に拡大しています。国内再編の経験を基盤に、グローバル展開へと発展させた好例といえます。

連続M&Aは、単発の海外進出とは異なり、「統合能力」を武器にスケールを拡大するモデルです。統合プロセスを標準化し、組織的に実行できるかが成否を分けます。

4 異業種への拡張と長期視点

前田工繊は累計17社を買収し、建設資材にとどまらず農業資材や不織布などへ事業領域を拡大してきました。買収直後に成果が出なくても売却せず、長期視点で育てる姿勢を貫いています。

東日本大震災後に買収した企業の獣害対策用品が、クマ対策需要の高まりで成長するなど、社会課題の変化が事業機会に転化する例もあります。

このように、連続M&Aは単なる規模拡大ではなく、「社会課題への対応力」を取り込む戦略ともいえます。

5 連続M&A成功の共通要素

事例を横断すると、いくつかの共通点が浮かび上がります。

第一に、明確な産業観を持っていることです。人手不足や後継者難など、構造変化を機会と捉えています。

第二に、統合後の経営改革力です。人材再配置、設備投資、販路開拓など、PMI(買収後統合)を徹底しています。

第三に、長期的視点です。短期収益だけでなく、グループ全体の価値向上を目指しています。

単発的なM&Aではなく、戦略的に「連続」させることで、企業は業界の中核へと進化します。

結論

日本企業の連続M&Aは、防衛的な再編から、積極的な成長戦略へと性格を変えつつあります。人手不足や後継者難という逆風のなかで、再編の「目」となり、グループ全体を方向づける企業が台頭しています。

重要なのは、規模ではなく統合力です。買収先の強みを活かし、投資を惜しまない姿勢が企業価値を高めます。連続M&Aは、成熟社会における新しい成長モデルとして、今後さらに存在感を増すでしょう。


参考
日本経済新聞「日経ヴェリタス」2026年1月17日公開記事「連続M&Aで強くなる」2026年2月21日夕刊要約記事
各社決算資料および有価証券報告書(2025年期)

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