親の老後資金とこどもNISAの線引き──「善意のつもり」が家計を壊さないために

FP
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こどもNISAは、子どもの将来に向けた資産形成を後押しする制度です。
一方で、親世代は老後資金という別の大きな課題を抱えています。
子どものために早くから積み立てたいという思いは自然ですが、
その結果、親自身の老後資金が不十分になると、本末転倒になりかねません。

本記事では、こどもNISAと親の老後資金をどう線引きすべきか、考え方を整理します。

こどもNISAは「余裕資金」で使う制度

まず確認しておきたいのは、こどもNISAは生活防衛資金や老後資金の代替ではないという点です。
親の資産形成には、
・老後の生活費
・医療・介護費
・住まいの維持費
といった確定的または準確定的な支出が控えています。

これらに充てる資金が十分に確保できていない段階で、
こどもNISAに多額の資金を回すのはリスクが高い判断といえます。

こどもNISAに回す資金は、
「使わなくても生活に支障が出ない余裕資金」
に限定するのが基本です。

親のNISAとこどもNISAは役割が違う

制度が似ているため混同されがちですが、
親のNISAとこどもNISAは目的が異なります。

親のNISAは、
・老後資金の形成
・年金を補完する運用
が主な目的です。

一方、こどもNISAは、
・教育資金の一部
・長期の金融教育
が目的となります。

この役割の違いを曖昧にすると、
「いざとなったら子どもの資産を使う」
という発想が生まれやすくなります。
それは、子どもの資産を親のリスクに巻き込むことを意味します。

「教育資金だから安全」という誤解

こどもNISAは教育資金に使える制度ですが、
投資である以上、価格変動リスクは避けられません。

親の老後資金は、
・必要時期が比較的明確
・取り崩し開始が近づいている
という特徴があります。

これに対して、こどもNISAは、
・使う時期まで時間がある
・途中で積み立てを止める選択も可能
という柔軟性があります。

老後資金と教育資金を一体で考えてしまうと、
「どちらのためのリスクなのか」が不明確になります。
資金の目的ごとにリスクの取り方を分けることが、線引きの基本です。

ありがちな失敗パターン

実務的によく見られるのが、次のようなケースです。

・親のNISA枠を十分に使わないまま、こどもNISAを優先する
・老後資金が不足しているのに、祖父母資金をあてにして積み立てを続ける
・子どもの教育費を理由に、親の運用リスクを高めてしまう

いずれも、「子どものため」という善意が、
親自身の家計を不安定にしてしまう例です。

線引きのための実務的な順序

こどもNISAを始める前に、次の順序で整理しておくと判断しやすくなります。

  1. 生活防衛資金は確保できているか
  2. 公的年金と老後支出の見通しは立っているか
  3. 親のNISA・iDeCoで最低限の老後準備は進んでいるか
  4. そのうえで余る資金があるか

この4段階をクリアした資金だけを、こどもNISAに回す。
これが、親と子の資産を混同しないための現実的な線引きです。

子どもに「背負わせない」設計

こどもNISAは、子どもの将来を助ける制度であって、
親の老後不安を子どもに先送りする制度ではありません。

老後資金が不足した結果、
「結局、子どもに頼らざるを得ない」
という状況になれば、
こどもNISAで積み立てた意味そのものが揺らぎます。

親の老後は親が責任を持つ。
そのうえで、余力の範囲で子どもを支援する。
この順序を崩さないことが、制度を健全に使う前提になります。

結論

こどもNISAと親の老後資金は、
同じ「投資」という言葉で語られがちですが、
本来は全く別の目的を持つ資金です。

線引きのポイントは、
・余裕資金で行う
・目的を混ぜない
・いざという時に子どもの資産を使わない
という3点に集約されます。

こどもNISAは、親の安心の上に成り立つ制度です。
まず親自身の老後を安定させ、その土台の上で子どもの将来を支える。
この考え方こそが、制度を長く生かすための最も重要な視点といえるでしょう。

参考

・日本経済新聞「こどもNISAどう使う? 幼い頃から積み立てを」(2026年1月19日夕刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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