若者・子育て世帯に「手ごろな住宅」は本当に届くのか

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――住生活基本計画案から読み解くこれからの住まい政策

都市部を中心に住宅価格の上昇が続いています。

特に若者や子育て世帯にとって、住まいの取得や安定した賃貸住宅の確保は、将来設計そのものを左右する重要なテーマです。

2026年2月、日本経済新聞が報じた国土交通省の新たな住生活基本計画案は、この問題に正面から向き合う内容となっています。

今回は、その政策のポイントと、実務的に見ておくべき論点を整理します。


1.政策の骨子 ― 「量」と「流通」の両面から

今回の計画案では、若者・子育て世帯が希望する住まいを確保できる環境整備を明確な目標に掲げています。

ポイントは大きく3つです。

① 空き家・公営住宅の活用

都市部には、
・相続後に未流通となっている空き家
・高齢者の施設入居後に残る住宅
・公営住宅の空き住戸

といった「使われていない良質ストック」が存在します。

これらの流通を促すことで、新築偏重ではない供給拡大を図る方向性が示されています。


② 残価設定型住宅ローンの普及

いわゆる「残価設定型ローン」を住宅分野に広げる方針です。

これは、将来の売却を前提に元本の一部を残し、
毎月の返済額を抑える仕組みです。

若年層のキャッシュフロー負担を軽減する狙いがあります。


③ URによる子育て団地の整備

都市再生機構(UR)は、子育て世帯が優先的に入居できる団地を
2035年度までに100団地・10万戸整備するとしています。

2025年度時点ではゼロとされており、政策的な本格参入と言えます。


2.40㎡基準の意味 ― 税制との連動

住宅面積についても重要な動きがあります。

政府・与党は2026年度税制改正大綱で、中古住宅の床面積要件を
50㎡から40㎡へ条件付きで引き下げました。

今回の計画では、2~3人世帯や未就学児2人世帯向けに
「40㎡程度を上回る広さ」と明記されています。

つまり、

政策面(住宅供給)

税制面(取得要件緩和)

を連動させている点が特徴です。

コンパクト住宅を前提とした都市居住モデルを明確に後押しする流れと言えます。


3.実務的に見る3つの論点

ここからは少し踏み込んで考えてみます。

(1)残価設定型ローンのリスク

毎月の返済負担は軽くなりますが、

・将来の売却価格が想定を下回った場合
・相続時の評価や処分
・住み替え時の市場環境

など、価格変動リスクは借主側に残ります。

短期居住前提か、長期居住前提かで判断は大きく変わります。


(2)空き家流通は本当に進むか

相続未了物件
共有持分の問題
心理的瑕疵
管理状態の個体差

など、制度だけでは解決しにくい実務上の壁があります。

空き家の「存在」と「流通可能」は別問題です。


(3)面積40㎡は足りるのか

40㎡は2LDKには届きません。

都市型コンパクト住宅としては現実的ですが、

・子どもの成長
・在宅勤務の増加
・将来の家族構成変化

を考えると、可変性のある設計が鍵になります。


4.住宅政策は「人口政策」でもある

今回の政策は、単なる住宅供給策ではありません。

若者の結婚・出産・定住を後押しする
「人口戦略」としての意味を持ちます。

住宅価格の高騰は、実質的に可処分所得を圧迫し、
出生率にも影響を及ぼします。

住宅政策は社会保障や税制とも深くつながるテーマです。


5.これから家を考える世帯が意識すべきこと

制度が整っても、最終判断は個々の世帯に委ねられます。

意識したいポイントは次の通りです。

・家計全体の固定費比率
・将来の教育費・老後資金とのバランス
・資産としての流動性
・売却出口戦略

「今買えるか」ではなく
「10年後どうするか」まで描けるかが重要です。


結論

今回の住生活基本計画案は、

・空き家活用
・金融商品の工夫
・公的賃貸の拡充
・税制緩和

を組み合わせた包括的アプローチです。

方向性としては妥当ですが、
実効性は市場環境と利用者の判断に大きく左右されます。

住宅は「消費」でもあり「資産」でもあります。

若者・子育て世帯にとって本当に持続可能な住まいとは何か。

政策の動きを追いながら、
家計設計とセットで冷静に考える必要があります。


参考

  • 国土交通省 住生活基本計画(全国計画)素案(住生活基本計画見直しに関する審議会資料、2026年2月時点公表資料)
  • 独立行政法人都市再生機構「子育て世帯及び若者夫婦世帯を対象とした情報提供サービス及び申込優先受付の導入について」(2025年6月27日公表)
  • 独立行政法人都市再生機構「UR賃貸住宅のメリット・特徴」「よくあるご質問」(UR賃貸住宅の制度説明ページ、閲覧時点の公表内容)
  • 日経新聞 2月17日朝刊 手ごろな住宅の供給促進 若者・子育て世帯向け 国交省計画案
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