若年層に広がる個人向け国債――金利ある世界と資産形成の変化

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日本では長らく超低金利の環境が続いてきました。銀行預金の金利はほぼゼロに近く、安全資産としての国債も資産形成の手段として注目されることはあまりありませんでした。

しかし近年、状況が変わりつつあります。金利の上昇に伴い、個人向け国債の利回りが大きく改善したことで、投資商品としての魅力が高まっています。特にネット証券を通じた購入が急増しており、若年層を中心に国債投資への関心が広がっています。

本稿では、個人向け国債の販売が拡大している背景と、資産形成における意味について整理します。


ネット証券で急増する個人の国債購入

近年、ネット証券を通じた個人向け国債の販売額は大きく伸びています。主要ネット証券における2025年7~12月の販売額は約1500億円に達し、5年前の同時期と比べて約5倍に増加しました。

さらに2026年に入ってからも勢いは続いています。あるネット証券では2026年1月の販売額が500億円を超え、過去の半期販売額の大半に匹敵する規模となりました。

このような急増の背景には、ネット証券の顧客層があります。ネット証券は30代以下の利用者が多く、資産形成を始める世代が国債を購入するケースが増えています。特に超長期の国債を購入する人の半数以上が40代以下であるとされ、若年層の投資対象として広がりを見せています。


金利上昇がもたらした投資妙味

個人向け国債の人気を押し上げている最大の要因は、金利上昇です。

変動10年の個人向け国債は、かつて最低利率が0.05%程度でした。これは実質的に預金とほとんど差がない水準でした。しかし金利環境の変化により、現在は利率が1.5%前後まで上昇しています。

個人向け国債には主に次の3種類があります。

・変動10年
・固定5年
・固定3年

これらは1万円から購入でき、元本割れがないという特徴があります。また変動10年は半年ごとに金利が見直されるため、金利上昇局面では利回りが上昇する仕組みです。

このような商品性が、資産形成を始めたばかりの投資家にとって安心感のある選択肢となっています。


定期預金の代替商品としての位置づけ

個人向け国債の需要増加は、定期預金との比較でも理解できます。

例えば、メガバンクの10年定期預金の利率はおおむね1%未満にとどまっています。これに対して、変動10年の個人向け国債は1%台半ばの利率が見込めるため、利回り面での優位性があります。

さらに、個人向け国債には次のような特徴があります。

・元本保証
・半年ごとの利払い
・最低金利保証
・中途換金可能(一定期間経過後)

このため、投資というよりも「安全性の高い貯蓄商品」として利用されるケースも多く、定期預金の代替商品として位置づけられています。


対面証券からネット証券への販売シフト

一方で、従来国債販売の中心だった対面証券では販売額が減少しています。

大手証券会社の販売額は過去5年で大幅に減少しました。その背景には、販売手数料の制度変更があります。

かつては国債購入時にキャッシュバックキャンペーンが行われることも多く、例えば1000万円購入すると4万円程度が還元されることもありました。しかし制度変更により還元額は大きく減少し、販売インセンティブが弱まったとされています。

一方、ネット証券は低コストの運営モデルを活かし、オンライン上で国債購入を簡単に行える環境を整備しています。利息シミュレーション機能などのサービスも拡充され、初心者でも購入しやすい環境が整っています。


国債市場における個人マネーの意味

日本の国債残高は1000兆円を超えていますが、そのうち個人の保有割合は1%台にとどまっています。国債の多くは金融機関や日本銀行が保有しています。

しかし日銀が国債購入を減らす中で、政府としては国債の安定的な消化先を広げる必要があります。その一つの候補が家計マネーです。

実際、財務省の研究会でも家計による国債保有を促進する必要性が議論されています。資産形成世代を顧客に持つネット証券の役割は今後さらに大きくなると考えられています。


結論

個人向け国債の販売拡大は、日本の金融環境の変化を象徴する現象です。

長く続いた超低金利の時代では、国債は個人投資家にとって魅力的な商品ではありませんでした。しかし金利上昇により、安全資産としての魅力が再び高まっています。

さらにネット証券の普及により、若年層でも国債を簡単に購入できる環境が整いました。資産形成の初期段階では、リスク資産だけでなく安全資産を組み合わせることも重要です。

国債投資の広がりは、日本の家計金融資産の運用構造にも変化をもたらす可能性があります。今後、資産形成層のマネーがどのように国債市場に流入していくのかが注目されます。


参考

日本経済新聞 2026年3月5日朝刊
個人の国債購入、ネット経由急増

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