自宅を売って住み続ける「リースバック」―仕組みと注意点を整理する

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老後資金や住宅ローンの返済などを背景に、「リースバック」という言葉を耳にする機会が増えています。
自宅を売却したうえで賃貸として住み続ける仕組みで、まとまった資金を確保できる点が注目されています。

とくに近年は高齢者だけでなく、50代・60代の現役世代でも検討するケースが増えています。住宅ローン金利の上昇や家計の見直しを背景に、自宅資産を現金化する手段として関心が高まっているためです。

しかし、リースバックは仕組みを十分理解せずに利用すると、住み続けられなくなる、あるいは資金面で不利になる可能性もあります。本稿では、リースバックの基本的な仕組みと注意点を整理します。


リースバックとは何か

リースバックとは、自宅を不動産会社などに売却し、その後は賃貸契約を結んで同じ家に住み続ける仕組みです。

通常の不動産売却では、家を売ると引っ越す必要があります。
一方、リースバックでは次のような流れになります。

  1. 自宅を不動産会社などに売却する
  2. 売却代金を受け取る
  3. その家を賃貸住宅として借りる
  4. 家賃を支払いながら住み続ける

この仕組みにより、引っ越しをせずにまとまった資金を得ることができます。

利用目的としては、次のようなケースが多く見られます。

  • 住宅ローンの返済資金を確保する
  • 老後資金を確保する
  • 借入金を整理する
  • 将来の住み替えまでの一時的な資金確保

生活環境を変えずに資金を確保できる点が、大きな特徴です。


売却価格は市場価格より低くなりやすい

リースバックで最も注意すべき点の一つが売却価格です。

一般的に、リースバックの売却価格は市場価格の7〜8割程度になるとされています。
これは不動産会社が物件を「買い取り」する形になるためです。

通常の不動産売却では、仲介を通じて市場で購入者を探します。
一方、リースバックでは事業者が直接購入するため、いわゆる「下取り価格」に近くなります。

例えば市場価格が3000万円の住宅の場合、売却価格は次のようになることがあります。

  • 市場売却:3000万円前後
  • リースバック:約2100万〜2400万円

現金化のスピードと引き換えに、売却価格が低くなる可能性がある点は理解しておく必要があります。


賃貸契約の内容にも注意が必要

リースバックでは売却後に賃貸契約を結びますが、この契約条件も重要です。

賃貸契約には主に次の2種類があります。

普通借家契約

契約期間終了後も更新できる可能性がある契約です。借主の居住が比較的安定します。

定期借家契約

契約期間が終了すると更新されない契約です。貸主が更新に応じなければ退去する必要があります。

リースバックでは、数年間の定期借家契約が採用されることも多く、契約終了後に住み続けられない可能性があります。

「自宅に住み続けられる」と考えて契約すると、後で想定外の事態になることもあるため、契約内容の確認が重要です。


家賃負担は意外と大きくなることもある

リースバックでは、売却後に家賃を支払う必要があります。

事業者によって異なりますが、年間の家賃は買い取り価格の数%程度とされることが多く、次のような例もあります。

  • 年間賃料:買い取り価格の6〜8%程度

仮に2000万円で売却した場合、

  • 年間家賃:約120万〜160万円

となることがあります。

この場合、10年以上住むと、家賃総額が売却価格を上回る可能性もあります。
長期的な資金計画を考えることが重要です。


リバースモーゲージとの違い

自宅を活用して資金を確保する方法としては、「リバースモーゲージ」もあります。

両者の違いは次のとおりです。

リースバックリバースモーゲージ
自宅の所有売却する所有したまま
資金の受け取り売却代金融資
融資額の目安市場価格の7〜8割不動産価格の5〜6割
住み続ける条件賃貸契約所有者として居住

リースバックは資金を多く得られる可能性がありますが、所有権は失われます。
一方、リバースモーゲージは借入であるため、将来的な返済や相続の問題が関係してきます。


他の選択肢と比較することが重要

リースバックは有効な手段になる場合もありますが、必ずしも最適な方法とは限りません。

例えば次のような選択肢も考えられます。

  • 通常の不動産売却
  • 住宅ローンの返済条件変更
  • リバースモーゲージ
  • 住み替え

とくに住宅ローン返済が厳しい場合は、まず金融機関に返済条件の変更を相談することが勧められるケースもあります。

リースバックは仕組み上、売却価格と賃料の両面で利用者に不利になりやすいと言われることもあります。利用する場合には、複数の選択肢と比較したうえで判断することが重要です。


結論

リースバックは、自宅に住み続けながら資金を確保できる仕組みとして注目されています。住宅ローンの整理や老後資金の確保など、一定の場面では有効な選択肢になり得ます。

一方で、

  • 売却価格が市場価格より低くなる
  • 定期借家契約で住み続けられない可能性がある
  • 家賃負担が長期的に大きくなる

といった点には注意が必要です。

自宅という大きな資産に関わる判断であるため、リースバックだけでなく、売却や借入など複数の選択肢を比較しながら検討することが重要です。


参考

日本経済新聞「<ステップアップ>リースバック 売却価格に注意 利用者に不利なケースも」2026年3月7日 朝刊
国民生活センター 公表資料(リースバックに関する相談動向)

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