日本では、多くの家庭にとって自宅は最大の資産の一つです。長年の住宅ローンを返済して取得した住宅は、生活の基盤であると同時に、資産としての側面も持っています。
近年は、住宅を単なる住まいとしてではなく、老後資金の確保や相続対策の観点から考える必要性が高まっています。リースバックやリバースモーゲージといった制度も広がり、自宅資産の活用方法は多様化しています。
しかし、自宅を資金化するのか、それとも相続資産として残すのかによって、税務や資産承継の状況は大きく変わります。本稿では、住宅をめぐる資金戦略と税務の関係を整理します。
住宅は生活資産であり金融資産でもある
住宅はまず生活の基盤となる資産です。住まいとしての機能が最も重要であり、生活環境や家族の状況によって価値が決まります。
一方で、住宅は資産としての側面も持っています。住宅価格が上昇している地域では、長期間保有することで資産価値が高まることもあります。また、住宅は売却や担保設定によって資金を生み出すことも可能です。
このため、住宅は次の二つの性格を併せ持つ資産といえます。
生活資産
住まいとしての役割
金融資産
売却や担保によって資金化できる資産
老後の資産設計を考える際には、この二つの側面をどのように位置づけるかが重要になります。
自宅を活用する資金調達の方法
自宅を活用して資金を確保する方法として、いくつかの制度が利用されています。
代表的なものがリースバックです。自宅を売却し、その住宅を賃貸として借りて住み続ける仕組みであり、まとまった資金を得られる点が特徴です。住宅ローンの整理や老後資金の確保などを目的として利用されることがあります。
もう一つの方法がリバースモーゲージです。自宅を担保に金融機関から融資を受ける仕組みであり、自宅の所有権を維持したまま資金を得ることができます。
このような制度は、自宅を金融資産として活用する典型的な例といえます。
自宅の売却は税務に影響する
自宅を売却すると、税務上は不動産の譲渡として扱われます。売却益が生じた場合には譲渡所得課税の対象となります。
ただし、居住用財産の売却については3000万円特別控除が適用される場合があり、多くのケースでは課税所得が発生しないこともあります。
一方で、自宅を売却すると資産の形は不動産から現金へと変わります。この点は相続の場面で重要な意味を持ちます。
不動産と現金では相続税の評価が異なる
相続税の計算では、不動産は市場価格ではなく相続税評価額で評価されます。土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基準とするため、市場価格より低くなることが一般的です。
さらに自宅の土地については、小規模宅地等の特例により評価額を大きく引き下げることができます。条件を満たせば評価額を最大80%減額することも可能です。
このため、不動産のまま保有している場合と、売却して現金化した場合では、相続税の課税額が大きく変わる可能性があります。
相続の観点では自宅は有利な資産になることもある
相続税の観点から見ると、自宅不動産は有利な資産になることがあります。
例えば次のような理由です。
土地は路線価評価となる
小規模宅地等の特例が適用される
建物は固定資産税評価額で評価される
これらの要素により、不動産は市場価格より低い評価額となることがあります。
一方、現金や預金はそのままの金額で相続財産となります。このため、自宅を売却して現金化すると、相続税の評価額が高くなる可能性があります。
住宅の役割は世代によって変わる
住宅の位置づけは、ライフステージによって変化します。
現役世代にとっては、住宅は生活基盤としての意味合いが強くなります。子育てや通勤など生活環境との関係が大きいためです。
一方、高齢期になると住宅は資産としての側面が強くなります。生活費の確保や住み替え、介護施設への入居など、住宅資産をどのように活用するかが課題になります。
さらに相続の場面では、住宅は資産承継の対象となります。税務上の制度も含めて検討する必要があります。
結論
住宅は生活資産であると同時に、資金調達や資産承継に関わる重要な資産でもあります。
自宅を売却して資金化するのか、それとも相続資産として残すのかによって、税務や資産構成は大きく変わります。リースバックやリバースモーゲージなどの制度も含め、住宅の活用方法は多様化しています。
自宅は人生の中でも最も重要な資産の一つです。生活設計、老後資金、相続の観点を総合的に考えながら、住宅との向き合い方を検討することが重要といえます。
参考
国税庁 譲渡所得に関する解説資料
国税庁 小規模宅地等の特例に関する解説
国税庁 路線価制度の概要
日本経済新聞 住宅資産活用に関する特集記事(2026年)
