自動車メーカー研究開発費の行方(第4回)国内メーカー vs 海外メーカー

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1. 研究開発費比率で見る国内と海外の差

研究開発費は「未来を切り拓く投資」です。その大きさは売上高比率で比較するのが一般的ですが、ここで国内メーカーと海外メーカーの違いが鮮明に表れます。

  • 国内メーカー(7社合計・2026年3月期)
    売上高比率:3.9%前後
    (最も高いのはホンダ5.7%、最も低いのはトヨタ2.8%)
  • 海外メーカー(2024年実績)
    独フォルクスワーゲン(VW)、中国BYDなど:5〜7%

つまり、海外勢の方が相対的に研究開発費を厚く投じているのです。


2. 海外メーカーが積極投資できる理由

なぜ海外勢は高い比率を維持できるのでしょうか。いくつかの背景があります。

  1. EV市場での先行
    中国のBYDはEV販売台数で世界トップクラス。市場シェアを伸ばすため巨額投資を継続。
    欧州勢も脱炭素政策の後押しでEVシフトを加速しています。
  2. ソフトウェアへの大胆な投資
    VWは「ソフトウェア会社に変わる」と公言。自動運転・車載OSの開発に研究開発費を集中的に配分。
  3. 政策と市場規模の後押し
    中国政府はEV普及に補助金を投じ、欧州は規制でガソリン車を段階的に廃止。市場が成長しやすい環境です。

3. 国内メーカーの「効率」と「慎重さ」

一方で、日本メーカーは「コスト効率の高さ」が強みとされます。少ない研究開発費でも品質の高い技術を生み出してきた歴史があります。
しかし課題もあります。

  • ソフトウェア分野での遅れ
    自動運転やSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)では海外勢が先行。国内メーカーは「ハードでの強さ」を持ちながら、ソフト開発体制の立ち遅れが指摘されています。
  • 投資判断の慎重さ
    EV需要の鈍化を受け、国内勢は一部で投資計画を縮小(例:ホンダのEV投資額を10兆円から7兆円へ)。守りの姿勢が見られます。

4. 競争環境の変化とリスク

海外勢が研究開発費を増やす中、日本メーカーが投資を抑制すると、次のリスクが生じます。

  • ソフト・自動運転分野でのシェア喪失
  • 新興国市場での価格競争に不利
  • EV化の波に対応できず、グローバル競争から脱落

一方で、効率的に成果を出せるなら「少ない投資で勝つ」戦略も成立します。国内メーカーはこのバランスをどう取るかが問われています。


5. 投資額の大小より「具体性」が鍵

専門家は「国内勢は効率が高い」と評価する一方、「自動運転やソフトの領域は具体的な投資増が必要」と指摘します。
つまり、金額だけでなく「どこに・どのように使うのか」が重要。たとえばEVの需要が鈍化しても、ソフトやバッテリー開発は避けて通れません。


まとめと次回予告

  • 国内メーカーの研究開発費比率は3〜5%台、海外は5〜7%台
  • 日本勢は「効率性」が強みだが、ソフト・自動運転で後れを取る懸念
  • 海外勢は政策と市場環境に支えられ、大胆な投資を継続
  • 今後は「金額よりも具体性」が成否を分ける

次回(第5回)はシリーズ最終回として、「未来を左右する研究開発費の使い道」に迫ります。EVからSDV、自動運転、さらには水素や次世代バッテリーなど、投資の方向性が日本メーカーの未来をどう変えるのかを考察します。


👉 参考:日本経済新聞「車7社、研究開発費3.9%」
記事リンク(日経)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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