老後のお金の不安は、情報不足よりも整理不足から生まれます。
年金、NISA、iDeCo、投資資産、分配金、取り崩し。
それぞれを個別に考えている限り、「全体として大丈夫かどうか」は見えてきません。
本稿では、本シリーズで整理してきた考え方を、
実務で使えるチェックリスト形式にまとめます。
すべてに「はい」と答える必要はありません。
重要なのは、「どこが未整理か」を自覚することです。
チェック① 年金で「最低限の生活費」は把握できているか
まず確認すべきは、老後キャッシュフローの土台です。
・公的年金の年額を把握している
・最低限必要な生活費(住居・食費・光熱費など)を把握している
・年金で賄える部分と不足額を区別できている
年金で生活が完結しなくても問題はありません。
重要なのは、不足額を他の資産でどう補うかを言語化できているかです。
チェック② 資産を「3つの箱」に分けて考えているか
老後資産は、次の3分類で整理できていますか。
・非課税で使える資産(NISA)
・課税されるが調整できる資産(課税口座)
・受取時に課税関係が決まる資産(iDeCo)
この区別が曖昧なまま取り崩すと、
税金や保険料が年ごとに大きく変動します。
チェック③ 取り崩しの「基本順序」を決めているか
取り崩し順序は、老後設計の中核です。
・課税口座 → NISA → iDeCo
という基本順序を理解している
・例外的に順序を変える判断基準を持っている
順序を決めていない場合、
「使いやすい資産から使う」
という場当たり的な判断になりがちです。
チェック④ 分配金を「生活費の前提」にしていないか
REITなどの分配金について、次を確認します。
・分配金を最低生活費に組み込んでいない
・分配金は「売却を減らす補助収入」と理解している
・分配金が減った年の対応を想定している
分配金は心強い収入ですが、
固定給ではないという前提が不可欠です。
チェック⑤ NISAの「老後での価値」を理解しているか
NISAは現役期よりも、老後にこそ真価を発揮します。
・NISA資産を早期に使い切る計画になっていない
・税金・保険料に影響しにくい調整弁として位置づけている
・医療費や大きな支出への備えとして温存している
NISAは「最後まで残す選択肢」もある資産です。
チェック⑥ iDeCoの受け取り方を「事前に」考えているか
iDeCoについて、次の点は整理できていますか。
・年金受取か一時金受取かの基本方針
・他の退職金との重なりを意識している
・できるだけ後ろ倒しで使う資産と理解している
iDeCoは、
取り崩し戦略の終点
として設計することで、税制メリットを最大化できます。
チェック⑦ 税金より「住民税・保険料」を意識しているか
老後の負担で差が出やすいのは、所得税よりこちらです。
・分配金・売却益・年金が同じ年に集中していない
・翌年の住民税・医療保険料を意識している
・収入を年ごとに平準化する発想がある
「税金がかかっていないのに手取りが減る」
という事態は、ここで防げます。
チェック⑧ 単身・夫婦・将来の変化を織り込んでいるか
老後設計は、現在の形だけでは不十分です。
・単身か夫婦かでキャッシュフローを整理している
・夫婦の場合、どちらかが亡くなった後を想定している
・介護・医療費の増加を想定している
老後資産設計は、
人生後半の変化を前提にする設計が必要です。
チェック⑨ 「やってはいけない取り崩し」を避けているか
次の行動を取っていないか、確認します。
・預貯金から先に使い切る
・NISAを早期に使い切る
・iDeCoを最初に受け取る
・毎年同額を機械的に取り崩す
これらはすべて、
資産寿命を縮めやすい行動です。
結論
老後資産設計に必要なのは、
高度な運用テクニックではありません。
・全体像を把握する
・順序を決める
・税制を味方につける
この3点が整理できていれば、
老後のお金は「不安な存在」から
管理できる生活資源に変わります。
このチェックリストは、
今後もライフステージや制度改正に応じて
何度も見直すための道具です。
老後資産設計に「一度きりの完成」はありません。
ですが、考え方の型は、ここで揃いました。
参考
・日本経済新聞 年金・資産運用関連記事
・国税庁 年金・配当・退職所得の課税関係資料
・金融機関・FP向け老後資産設計資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
