生成AIとSaaSの進化により、税理士業務は構造転換期を迎えています。
記帳や申告書作成といった作業は自動化が進み、価格競争にさらされやすくなりました。
その一方で、複数のSaaSを横断し、制度改正を織り込み、経営判断に接続する「統合者」としての役割はむしろ重要性を増しています。
本稿では、統合者型税理士の具体的なビジネスモデルを整理します。
統合者型とは何か
統合者型税理士とは、
・SaaSを選定する
・業務フローを設計する
・データ連携を整備する
・制度変更に対応する
・経営意思決定を支援する
という役割を担う存在です。
単なる申告代行ではなく、企業の業務基盤そのものを設計します。
ビジネスモデルの全体像
統合者型モデルは、次の4層構造で設計できます。
第1層:インフラ設計
まず行うのは、会計・経費・請求・給与・電子契約などのSaaS選定と統合です。
ここでは、
・データ連携の一貫性
・内部統制
・税務リスク管理
・将来の拡張性
を基準に設計します。
報酬形態は「導入設計フィー+月額保守」が基本になります。
第2層:制度アップデート管理
税制改正、インボイス制度、電子帳簿保存法など、制度変更への対応を定期的に組み込みます。
顧問契約の中に、
・制度改正ブリーフィング
・影響分析レポート
・対応設計提案
を組み込みます。
ここでの価値は「情報」ではなく「適用設計」です。
第3層:リスクマネジメント設計
税務は最適化だけでなく、否認リスクの管理が重要です。
例えば、
・役員報酬設計
・内部留保政策
・消費税課税方式選択
・事業承継設計
などを、中長期視点で設計します。
ここはAIが代替しにくい領域です。
第4層:経営意思決定支援
最終層は、財務・税務・資金繰りを統合した経営助言です。
単なる試算表説明ではなく、
・キャッシュフロー設計
・投資判断
・法人活用戦略
・出口戦略
まで踏み込みます。
この層があることで、顧問契約は価格競争から脱却します。
収益モデルの再構築
統合者型では、従来の「売上規模比例型顧問料」から転換が必要です。
1.設計フィー型
導入・再構築時にプロジェクト報酬を設定します。
2.定額アドバイザリー型
業務量ではなく、「設計責任」に対して月額報酬を設定します。
3.成果連動型(限定的活用)
資金調達やM&Aなど、特定案件では成功報酬型も組み合わせます。
統合者型の強み
このモデルの強みは3点です。
1.AIの普及が追い風になる
2.顧客との関係が長期化する
3.業務量増加と利益率が連動しない
特に「ひとり税理士」モデルとの相性が良く、AIを活用することで少人数でも高付加価値を提供できます。
統合者型が直面する課題
一方で課題もあります。
・IT理解力の継続的向上
・説明能力の高度化
・責任範囲の明確化
・料金体系の再設計
単にAIを使うだけではなく、顧客に設計思想を伝える力が不可欠です。
今後10年の展望
今後は、
作業代行型税理士
統合設計型税理士
の二極化が進むと考えられます。
SaaSの進化は避けられません。
しかし、それを脅威とみるか、基盤とみるかで未来は変わります。
結論
統合者型税理士とは、AIやSaaSを敵視するのではなく、それらを前提に再設計する存在です。
業務の中心が「作業」から「設計」へ移るとき、価値の源泉も変わります。
AI時代に求められるのは、処理能力ではなく構造理解力です。
統合者という立ち位置は、単なる生存戦略ではなく、職業の再定義そのものです。
参考
・日本経済新聞「日本企業『SaaS』のAI代替回避へ 業務ソフト独自性磨く」(2026年2月26日朝刊)

