生成AIの登場により、経理業務の在り方が大きく変わりつつあります。
「AIに仕事を奪われる」という議論もありますが、実際には日常業務の省力化と判断業務の高度化を両立するツールとして、AIを使いこなす力が求められています。
特に中小企業の経理現場では、Excelを中心とした集計・分析業務が多く、関数やマクロでつまずく場面が少なくありません。
そうした課題にこそ、生成AIの活用が効果を発揮します。
1. Excel業務での生成AI活用の基本
(1) 関数エラーの原因をAIで解析する
Excelで発生する「#N/A」や「#REF!」といったエラーは、範囲指定や参照関係のミスが原因であることが多いものです。
生成AIにエラー箇所のスクリーンショットを貼り付けて、「なぜこの関数がエラーになるのか」と質問するだけで、瞬時に原因と修正方法を提示してくれます。
また、ファイルサイズが小さければ、Excelファイル全体をアップロードしてAIに解析させることも可能です。
関数の相対参照/絶対参照($マーク)の指定ミスや参照範囲のずれなど、人的ミスを短時間で検出できます。
(2) 「やりたいこと」から関数を逆引きする
従来は目的に合った関数を調べるために、ウェブ検索や関数一覧を見て試行錯誤していた人も多いでしょう。
生成AIを使えば、「やりたいこと」から逆引きして最適な関数を教えてもらえます。
たとえば:
| やりたいこと | 推奨される関数の組み合わせ |
|---|---|
| 重複を除いて集計したい | SUMIF + UNIQUE |
| 複数条件で検索したい | INDEX + MATCH |
このように、「目的を日本語で伝えるだけ」で、適切な関数や数式を提案してもらえます。
(3) VBAマクロを自動生成する
Excel業務を自動化したい場合は、生成AIに「こういう処理をしたい」と伝えるだけで、VBAマクロのコードを生成できます。
たとえば「毎月の請求書データを自動転記するマクロを作成して」と入力すると、サンプルコードと説明が提示されます。
ただし、AIが生成したコードは必ずテスト環境で検証することが重要です。
本番データに直接適用すると、意図しないデータ上書きや破損が発生するおそれがあります。
2. 効率化のための「AIに聞く習慣」をつける
Excel作業に時間を取られがちな経理業務では、
「自分で調べる」よりも「AIに聞く」方が速く、正確な結果を得られる場合が多くあります。
生成AIを活用するうえでのポイントは次の3つです。
- まずAIに聞いてみる
わからない関数や構文があれば、即座に質問。検索より速く、文脈に沿った回答が得られます。 - 小さなタスクから慣れる
いきなり複雑な自動化に取り組む必要はありません。まずは関数の確認やグラフ作成など、簡単な課題から始めましょう。 - 社内ルールを遵守する
ファイルのアップロード時には、機密情報が含まれていないかを必ず確認。会社のAI利用ガイドラインに従って使うことが原則です。
3. 生成AIを「Excelヘルパー」として位置づける
生成AIは、経理担当者にとっての“仮想Excel講師”のような存在です。
関数の使い方、エラー修正、マクロ作成、グラフ作成など、Excelに関するあらゆる質問に対して、24時間即答してくれます。
AIを業務の一部に取り入れることで、次のような変化が期待できます。
- 単純作業の削減による残業時間の短縮
- 関数・マクロ作成スキルの習得スピード向上
- 人間が担うべき「分析・判断業務」への集中時間の確保
4. AI活用の心構え ―「理解より慣れ」
今後の経理に求められるのは、「Excelを理解する力」よりも「AIを使いこなす力」です。
AIをうまく活用することで、従来の検索やマニュアル作成に費やしていた時間を大幅に削減できます。
重要なのは、「まず使ってみる」こと。
小さな疑問や課題でも、AIに尋ねることで自然と活用の幅が広がっていきます。
まとめ:経理業務の進化を、AIとともに
生成AIは、経理担当者の敵ではなく、最良のパートナーです。
繰り返しの作業やエラー処理をAIに任せることで、私たちはより創造的で判断力を要する仕事に時間を使えるようになります。
AIの力を借りて、「早く・正確に・効率よく」経理業務を進めましょう。
これが、これからの時代の“経理力”です。
🖋 編集後記
Excelを扱う時間が長い人ほど、AI活用の恩恵は大きい。
関数やマクロの理解を深めるよりも、AIに質問しながら仕事を進める習慣をつけることが、スキルアップの第一歩です。
生成AIを「教えてくれる同僚」として、日々の業務に取り入れてみてください。
📚 参考:「企業実務」2025年9月号「成田、Excelと格闘する そこに登場する生成AI」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

