「AIが経理の仕事を奪う?」
そんな不安を抱く人も少なくありません。
しかし実際には、AIは“代わり”ではなく“味方”です。
正しく使えば、請求書処理・経費精算・月次レポート作成など、
これまで何時間もかかっていた作業を数分で終わらせることもできます。
経理の新常識――それは「AIと一緒に働く力」を身につけること。
その第一歩が、「プロンプト(指示文)」です。
第1章 AIは“質問の仕方”で結果が変わる
ChatGPTなどの生成AIは、あいまいな質問にはあいまいな答えを返します。
つまり、AIの性能を決めるのは“あなたの質問力”です。
たとえば次の例を見てください。
| NG質問 | OK質問 |
|---|---|
| 経費精算について教えて。 | 交通費の経費精算で、領収書がない場合の処理方法と、代替証憑の作成方法を教えてください。 |
後者のように「何を・どんな条件で・どんな形式で」知りたいかを伝えると、
AIは即戦力レベルの回答を返してくれます。
第2章 プロンプト作成の基本ルール3か条
経理業務でAIを活かすために、最低限押さえておきたいルールは次の3つです。
1️⃣ 明確さと具体性
→ あいまいな言葉を避け、条件・背景をできるだけ詳しく書く。
2️⃣ 完全な文章で書く
→ キーワードの羅列ではなく、正しい文として指示する。
3️⃣ 前提情報を与える
→ 「2025年4月購入のサーバー」など、具体的な事例を入れると回答精度が上がる。
この3つを意識するだけで、AIの回答の質が2ランク上がるといっても過言ではありません。
第3章 実務で使える!経理AIプロンプトの“黄金テンプレート”
どんな質問をすればいいかわからないときは、以下のテンプレートを使いましょう。
【役割】
あなたは経理の専門家です。
【知りたい内容】
在宅勤務手当の支給ルール(通信費・光熱費補助)を、
税務上の取扱いも含めて整理してください。
【回答形式】
表形式で、支給対象・金額基準・証憑・税務上の区分をまとめてください。
【制約条件】
現行法令に準拠し、会社と従業員の双方にとって合理的な内容にしてください。
この4ステップ構成(役割・内容・形式・制約)を使えば、
AIが経理部長クラスの精度で資料を作ってくれます。
第4章 出力から“逆算”するテクニック
うまく質問できなかったときは、次の一言を試してみましょう。
「この回答を得るための最適なプロンプトを考えてください。」
すると、AI自身が“良い質問の形”を提示してくれます。
この「逆算プロンプト」は、AIの思考構造を学ぶ最短ルート。
経理担当者の「AIスキル」を磨く上で、非常に効果的です。
第5章 今日から試せる“経理AI活用3選”
1️⃣ 経費精算ルールの作成
在宅勤務手当・出張旅費・交際費などの規定をAIで下書き。
2️⃣ 月次決算レポートの要約
決算データを貼り付けて「経営層向けに200字で要約して」と指示。
3️⃣ 予実分析の自動化
「乖離率の大きい項目と要因を分析して」と入力すれば、改善案まで生成。
これらを活用すれば、「資料作成に追われる経理」から「提案する経理」へと変われます。
第6章 AI活用の注意点
- 最新の法令は必ず確認する
→ ChatGPTは最新版の税制を常に反映しているわけではありません。 - 社内データは匿名化して入力
→ 機密情報を直接入力しないことが原則です。 - AIは“補助輪”であり“判断者”ではない
→ 最終判断は必ず人間(専門家)が行うこと。
まとめ:AIは経理の“新しい同僚”
AIはあなたの仕事を奪う敵ではなく、仕事を磨くパートナーです。
プロンプトという“言葉の技術”を身につけることで、
経理のスピードも、精度も、そして価値も10倍に高まります。
🖋️出典:『企業実務 2025年6月号』
アクタス税理士法人 藤田益浩「経理業務の効率化を図る『生成AI』活用術」より再構成。
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

