経理と生成AI ― 「なくなる仕事」から「進化する仕事」へ

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「AIで経理の仕事はなくなる」。
そんな言葉を聞くようになって、もう10年ほどが経ちます。
しかし現実には、AIによって経理の仕事が“消える”のではなく、“変わり始めている”のです。


経理に押し寄せる「生成AI」の波

近年、ChatGPTをはじめとする「生成AI(Generative AI)」の進化が、ビジネスの常識を変えています。
かつては人間しかできなかった文書作成・要約・質問応答・資料作成などの知的作業を、AIが自然な文章でこなせるようになりました。

経理部門も例外ではありません。
領収書の整理、仕訳の入力、月次報告書の作成など、「手作業でこなすのが当たり前」だった業務が、いま確実に自動化の波にのまれつつあります。


そもそも「生成AI」とは何か?

「生成AI」とは、その名の通り、文章・画像・プログラムなどを自動で“生成”するAIのことです。
大量のデータを学習し、人間のように考え、文章を書き、質問に答えることができます。

例えばChatGPTに「経費精算の流れを分かりやすく説明して」と入力すれば、数秒でステップを整理した解説文が返ってきます。
つまり、AIは単なる検索ツールではなく、「考えるアシスタント」になったのです。


従来のAI(RPA・OCR)との違い

経理の現場では、以前からAI技術は活用されてきました。

  • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
     定型作業を自動化。請求データをダウンロードしてExcelに転記するような処理を得意とします。
  • OCR(光学文字認識)
     紙の請求書や領収書を読み取り、データ化する技術です。

これらはいわば「決められた手順を正確にこなす職人型AI」。
一方、生成AIは曖昧な指示でも柔軟に考え、文章を作ったり、質問の意図を理解して回答したりできる“発想型AI”です。


経理業務を変える生成AIの活用例

では、実際にどんな場面で使えるのでしょうか。
現在、経理部門で注目されているのは次のような活用です。

  • ① 仕訳入力の自動提案・チェック
     領収書の内容から勘定科目をAIが自動で提案。人間は確認と判断だけで済むようになります。
  • ② 経費精算や社内問い合わせの自動応答
     社員からの「交通費の精算ルールは?」といった質問に、AIが即答。人事・経理の負担を軽減します。
  • ③ 月次・年次決算報告書のドラフト作成
     会計データを基に、AIが報告書の概要やコメント案を作成。修正に集中できるため、報告精度が向上します。
  • ④ 契約書や規程類の要約・リスク分析
     AIが長文を要約し、潜在的なリスクや抜け漏れを指摘。経理と法務の橋渡し役としても活用可能です。

「AI任せ」にしないために

ただし、AIの出力が常に正しいとは限りません
たとえば、誤った勘定科目の提案や、文脈を誤解した要約が出ることもあります。

重要なのは、AIを「置き換える存在」ではなく、“賢いアシスタント”として位置づけることです。
最終判断は人間が行い、AIには「準備」「下書き」「チェック補助」を任せる。
このバランスこそが、生成AIを最大限に活かす鍵になります。


生成AI時代に求められる経理の力

生成AIがもたらす変化は、「経理の仕事が減る」ことではなく、「人がやるべき仕事が変わる」ことです。
定型業務の自動化が進めば、求められるのは分析力・判断力・提案力

データを“扱う人”から、データを“活かす人”へ。
AIを理解し、使いこなせる経理担当者こそ、これからの企業を支える存在になっていくでしょう。


おわりに ― 経理は「なくなる仕事」ではない

AIの進化は脅威ではなく、チャンスです。
紙の山と格闘していた時代から、いまや数クリックで報告書ができる時代へ。
その変化を恐れるのではなく、受け入れ、学び、使いこなす。

経理の未来は、AIに奪われるものではなく、AIと共に進化するものです。


出典・参考:『企業実務』2025年7月号「中小企業経理の生成AI導入の基本 第1回」(白井敬祐公認会計士事務所)新人・成田、生成AIと出会う


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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