築古マンションと修繕積立金崩壊リスク ― 見えにくい財務危機をどう読むか

FP
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築30年、40年を超えるマンションが急増しています。
外観はまだ問題なく見えても、内部では修繕積立金の不足という静かなリスクが進行しているケースがあります。

修繕積立金は、マンションの将来を左右する「財務の土台」です。本稿では、築古マンションで起きやすい積立金崩壊リスクの構造と、区分所有者として確認すべきポイントを整理します。


なぜ築古マンションで問題が顕在化するのか

マンションの大規模修繕はおおむね12〜15年周期で行われます。築30年を超えると2回目、3回目の大規模修繕が必要になります。

問題は、当初の長期修繕計画が現在の物価水準を前提にしていないことです。近年は建設人件費と資材価格の上昇により、修繕費が2割前後上昇しています。過去の見積もりを前提とした積立水準では足りなくなるケースが増えています。

さらに築古になると、次のような要因が重なります。

・給排水管など見えない部分の更新費用が増える
・エレベーターや機械式駐車場の更新時期が到来する
・居住者の高齢化で合意形成が難しくなる
・空室増加により管理費・積立金の未収が発生する

費用は増え、意思決定は難しくなるという構造が、崩壊リスクを高めます。


修繕積立金不足がもたらす3つの選択

積立金が不足した場合、管理組合が取れる選択肢は主に3つです。

第一に一時金徴収です。数十万円から100万円単位の追加徴収になることもあります。支払えない区分所有者が出ると未収問題が拡大します。

第二に積立金の大幅引き上げです。毎月の負担が急増すれば、高齢世帯や固定収入世帯には重い負担になります。

第三に金融機関からの借入です。借入は一時的に問題を先送りできますが、返済原資は結局区分所有者の負担です。長期的には総支払額が増加します。

いずれの選択も、物件の資産価値に影響を与えます。積立金不足が明らかな物件は、売却時の価格下落要因になります。


「均等積立方式」と「段階増額方式」の落とし穴

多くのマンションでは、分譲当初に積立金を低く抑え、段階的に増額する方式を採用しています。販売しやすくするためです。

しかし築年数が進むと、増額幅が急激になりやすく、住民の合意が得られにくくなります。結果として必要な増額が実行できず、慢性的な不足状態に陥ることがあります。

均等積立方式の方が理論上は安定しますが、既存物件では途中変更が難しい場合もあります。


崩壊リスクを見抜くチェックポイント

区分所有者、あるいは購入検討者として確認すべきポイントは次のとおりです。

・長期修繕計画が直近5年以内に見直されているか
・将来30年分の収支シミュレーションがあるか
・積立金の累積残高が計画と整合しているか
・大規模修繕工事の実施履歴と費用の妥当性
・滞納率と未収金の推移

表面上の積立金残高だけでは判断できません。将来の工事費見込みと現在の積立水準の差額が本質です。


高齢化と合意形成リスク

築古マンションでは所有者の高齢化が進みます。収入が年金中心になると、積立金増額への反対が強まる傾向があります。

さらに相続未登記や所有者不明住戸が増えると、総会決議に必要な議決権確保が困難になります。財務問題が法的問題へ発展する可能性もあります。

修繕積立金の問題は、単なる会計問題ではなく、コミュニティと法制度の問題でもあります。


結論

築古マンションの修繕積立金崩壊リスクは、突然発生するものではありません。
長期修繕計画の甘さ、物価上昇、合意形成の困難さが重なり、徐々に顕在化します。

重要なのは次の3点です。

・早期の積立金見直し
・現実的な工事費見積もりへの更新
・財務状況の可視化と住民共有

マンションは共同事業体です。
財務規律が保てなければ、資産価値は維持できません。

購入時の価格や立地だけでなく、管理組合の財務健全性を読み解く視点が、これからの時代には不可欠です。


参考

日本経済新聞 2026年2月21日朝刊
「<ステップアップ>家の修繕、優先順位決める」
「不足が3割超、早期対応が有効」

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