第7回(最終回):「心の相続」——家族で“話し合う”という最高の相続対策

税理士
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■「知っているだけ」では相続はうまくいかない

このシリーズでは、相続税の仕組みから小規模宅地の特例、生前贈与、遺言書、家族信託まで――
制度や数字を中心にお話ししてきました。

けれども、どんなに完璧な節税対策をしても、
家族の気持ちがすれ違っていれば、相続は「争族」に変わります。

「相続=税金の話」と思われがちですが、
本当の相続とは、“想い”と“関係”を引き継ぐことなのです。


■“心の相続”とは何か?

「心の相続」とは、法律や税金ではなく、
家族の間で共有される価値観・感謝・願いを残すことを指します。

たとえば——

  • 子どもたちに「これからも助け合ってほしい」と伝える
  • 家を継ぐ人に「祖父母の思い出を大切にしてほしい」と託す
  • 長年支えてくれた配偶者に「ありがとう」を残す

相続の本質は、「財産を分けること」ではなく、
家族がどう生きてきたか、どうつながっていくかを形にすること。
それが“心の相続”の考え方です。


■「話しにくい話」をどう切り出すか

多くのご家庭で、「相続の話=縁起でもない」と避けられます。
しかし、実際にトラブルになるのは、話さなかった家族です。

💡FP・税理士が勧める「家族会議の始め方」

1️⃣ 最初は制度ではなく“想い”から話す
 「財産をどう分けるか」ではなく、
 「どんな家族でいたいか」「何を残したいか」から始める。

2️⃣ 家族全員で“情報の共有”をする
 財産の一覧、保険、預金、土地などを見える化。
 相続税シミュレーションをFPや税理士に依頼するのも有効です。

3️⃣ 意見の違いを“家族の個性”として受け入れる
 意見が割れるのは自然なこと。
 「揉める前に違いを知ること」が、むしろ最良の対策になります。


■エンディングノートという“心の地図”

遺言書が「法的な地図」だとすれば、
エンディングノートは“心の地図”です。

葬儀の希望、財産の一覧、家族へのメッセージなどをまとめることで、
相続手続きの混乱を防ぐだけでなく、
残された人たちが「どう受け継げばいいか」を理解しやすくなります。

🧾ポイント:

  • 市販のノートや手書きでOK
  • 毎年1回、見直すことが大切
  • 法的拘束力はなくても「家族への手紙」として強い効力を持つ

📌 たとえば、「この家には祖父の思い出がある」「母の着物は孫に譲ってほしい」
といった一言が、家族の心を穏やかにし、争いを防ぐこともあります。


■“数字の相続”から“関係の相続”へ

税金・制度・評価額――相続には数字がつきまといます。
けれども、FPや税理士として感じるのは、
「数字で測れないことこそ大切」だということ。

遺産の多寡よりも、

  • 感謝を伝える
  • 家族の役割を認め合う
  • 誰かが損をしても納得できる空気をつくる

こうした「関係の相続」ができる家庭ほど、
相続手続きも、心の整理もスムーズに進みます。


■“今からできる心の相続チェックリスト”

チェック項目内容
🏠 財産の見える化預金・不動産・保険をリスト化
🧾 遺言書・エンディングノートどちらも定期的に見直す
💬 家族会議年に1回、家族で話す日を設ける
🤝 感謝の伝達言葉・手紙・贈与など、形に残す
👨‍👩‍👧‍👦 次の世代へのバトン家族信託・教育資金贈与の活用

■FP・税理士からのメッセージ

相続の準備とは、“家族と向き合う勇気”を持つことです。
財産を残すよりも、「心を残す」ことのほうが、ずっと価値があります。

このシリーズを通じて、制度や節税の知識だけでなく、
「家族で語り合うきっかけ」を持っていただけたなら、それが一番の成果です。

相続は、家族の歴史を未来へつなぐ“愛のリレー”です。
どうぞ今日から、“心の相続”を始めてください。


📚参考:

  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度のご案内」
  • 国税庁「相続税の申告実績」
  • 日本経済新聞「まさか私も相続税? 地価高騰、申告対象者10年で3倍弱に」
  • 全国銀行協会「エンディングノートの書き方」

🎯シリーズ総まとめ

「知らなかったでは済まされない!“相続のリアル”と家族で考える備え方」

タイトル主なテーマ
第1回まさか私も相続税?相続税の基礎と課税対象者の拡大
第2回小規模宅地等の特例実家の評価減と使えないケース
第3回生前贈与・教育資金・住宅資金新・7年ルールと非課税贈与の再設計
第4回もめない相続遺言書と法務局保管制度
第5回実家をどうする?売却・リフォーム・賃貸の選択肢
第6回二次相続と家族信託“次の代”までの資産承継設計
第7回心の相続家族で話し合うという最高の対策

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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