第6回 親の医療・介護の“手続き大全” 困る前に知っておくべき流れ・必要書類・注意点を総整理

FP
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親の体調が急に悪化したり、介護が必要になったりすると、家族は短期間で多くの手続きを進める必要があります。しかし、医療・介護・行政手続きは複雑で専門用語も多く、慌てて調べながら進める家族が少なくありません。

本稿では、高齢の親に関して発生しやすい医療・介護の手続きを一つの流れで整理し、「困る前に備えておくべきこと」をわかりやすく解説します。

1. 親に何かあったときの「最初の一歩」

病気や転倒など、まず“医療”が先に必要となるケースが多く、その後に“介護”の手続きへ進む流れが一般的です。

まず確認すること

  • かかりつけ医はどこか
  • お薬手帳
  • 健康保険証
  • 介護保険証
  • 緊急連絡先
  • 現在の生活状況と症状

いざという時、これらがすぐ出せる状態にしておくのは、家族の負担軽減につながります。


2. 医療で最初に必要になる手続き

◆(1)情報共有

まず病院に以下を共有します。

  • 本人の既往歴・服薬
  • 主治医情報
  • 介護保険の認定状況
  • 家族の連絡先と来院可能時間

◆(2)入院・手術が必要な場合

病院から次の書類が渡されます。

  • 入院保証書
  • 手術同意書
  • 医療費の説明書
  • 退院調整担当者の連絡先

入院時は、早めに退院後の生活(自宅か施設か)について病院と共有しておくと、スムーズに進みます。


3. 要介護認定の手続き(市区町村)

親に介護が必要かもしれない場合、次の流れで進みます。

◆(1)申請

提出先:市区町村の介護保険課
必要書類:

  • 介護保険被保険者証
  • 本人確認書類
  • 申請書

※家族が代行可能

◆(2)訪問調査

市の調査員が自宅または病院で本人の状態を確認。

◆(3)主治医意見書

病院の医師が心身の状況を評価。

◆(4)介護認定(要支援/要介護1〜5)

申請から30日前後で結果が届く。


4. ケアマネジャーとの契約(介護サービス利用の入口)

要支援の場合:地域包括支援センター
要介護の場合:居宅介護支援事業所(ケアマネ)

ケアマネとの初回面談で確認すること

  • できること/できないこと
  • 家族が担える範囲
  • 医療ニーズ(通院頻度など)
  • 今の住まいの安全性
  • 予算(介護保険の自己負担1〜3割)

ケアマネが「ケアプラン」を作成し、必要な介護サービスが確定します。


5. 使える介護サービス(代表例)

◆ 訪問介護(ヘルパー)

買い物、掃除、入浴介助など。

◆ デイサービス

送迎付きで食事・入浴・機能訓練。

◆ 訪問看護

医師の指示のもと、看護師が訪問。

◆ 福祉用具レンタル

手すり、歩行器、介護ベッドなど。

◆ ショートステイ

一時的に施設で宿泊。

◆ 小規模多機能型居宅介護

通い・訪問・泊まりを一体で提供。

これらはケアマネのケアプランに基づき利用します。


6. 退院・施設入居に関する手続き

◆(1)退院調整

病院の「退院調整看護師」や「医療ソーシャルワーカー」が担当。

◆(2)自宅復帰の場合

  • 手すり設置など住宅改修(介護保険の補助あり)
  • 福祉用具レンタル
  • 訪問介護・訪問看護の手配

◆(3)施設入居の場合

入居判断に必要な情報:

  • 介護度
  • 医療ニーズ
  • 認知症の有無
  • 家族の通いやすさ
  • 費用(初期費用+月額)

提出書類:

  • 健康診断書
  • 介護保険証
  • 診療情報提供書(紹介状)
  • 本人確認書類

7. お金の手続き(自治体・年金・銀行)

◆ 医療費・介護費の支払い方法を決める

  • 銀行口座の引落設定
  • 家族が代理人になる場合の銀行手続き

◆ 高額療養費制度の利用

医療費が高額になると、後から払い戻し。

◆ 高額介護サービス費

介護保険で自己負担額が上限を超えた場合に払い戻し。

◆ 年金の住所変更・受取口座変更

住み替えの際に忘れやすいポイント。


8. 判断能力が低下した場合の手続き

急に認知症症状が出ると、家族が手続きできない事例が多発しています。

利用できる制度

  • 銀行の代理人制度
  • 任意後見契約(元気なうちに準備)
  • 家族信託(財産管理を柔軟に)
  • 成年後見制度(法定後見)

医療・介護と資産管理は密接に関連するため、早期検討が重要です。


9. 家族が事前に準備しておく「手続きノート」

以下の情報をノートやデジタルで共有しておくと、手続きが圧倒的に楽になります。

◆ 医療

  • かかりつけ医
  • 服薬状況
  • 既往歴
  • 医療機関の診察券

◆ 介護

  • 介護保険証
  • 過去のサービス利用歴
  • 緊急連絡先

◆ お金・契約

  • 銀行口座一覧
  • 年金の受取先
  • 保険証券
  • 不動産情報
  • 住所変更が必要な契約一覧

◆ 本人の希望

  • 住みたい場所
  • 介護の希望
  • 延命治療の考え方
  • 家族への伝言

結論

親の医療・介護の手続きは、病院・自治体・ケアマネ・介護事業者と多くの関係者が関わり、短期間に多数の判断を求められます。最も重要なのは、事前に情報を整理し、親の意思を家族が共有しておくことです。

元気なうちに準備しておくことで、いざという時に慌てず、より納得感のある選択ができます。家族全員が協力し合い、親の「これからの暮らし」を主体的に支えていくことが、安心につながります。


出典

厚生労働省「介護保険制度」、医療機関の退院支援資料、自治体の介護サービス説明資料 ほか


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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