■ 1.「相続前3年ルール」とは?
これまで相続税の計算では、
亡くなる前に贈与した財産のうち、相続開始前3年以内の贈与は
「相続財産に持ち戻す(加算する)」というルールがありました。
たとえば、亡くなる2年前に子どもへ1,000万円を贈与していた場合、
その1,000万円は「相続税の対象」として計算に含める、というものです。
これを俗に「相続前3年ルール」と呼びます。
■ 2.2024年から「7年ルール」に延長!
2023年度(令和5年度)の税制改正で、
この3年ルールが大きく見直され、
2024年(令和6年)以降の贈与からは、
🔸「相続開始前7年以内の贈与」が対象になります。
つまり、亡くなる7年前までさかのぼって贈与が加算されるようになりました。
相続税の“監視期間”が、3年から一気に倍以上に延びたのです。
■ 3.どうして7年に延びたの?
背景には、長年の課題だった「生前贈与による相続税逃れ」があります。
これまでの制度では、
「亡くなる4年前に贈与した分は対象外」だったため、
生前に少しずつ贈与して財産を減らす方法が一般的でした。
しかし実際には、「健康状態が悪化してから急いで贈与する」ケースが多く、
“亡くなる直前の駆け込み贈与”が相次いでいました。
そこで政府は、
「本当に生前贈与を有効活用したい人」と
「節税目的の駆け込み贈与」を区別するため、
期間を7年に延長したのです。
■ 4.7年ルールはすぐ全部に適用されるわけではない
いきなり「7年全部」が対象になるわけではありません。
改正は段階的に適用されます。
| 相続が発生した年 | 加算対象となる贈与期間 | 補足 |
|---|---|---|
| 〜2026年12月31日 | 相続前3年以内 | 従来どおり |
| 2027〜2030年 | 相続前7年以内(ただし3年超部分は100万円控除あり) | 移行期間 |
| 2031年以降 | 相続前7年以内すべて | 新ルール完全適用 |
つまり、完全に「7年ルール」になるのは2031年以降の相続からです。
2024〜2030年までは緩やかな移行期間となっています。
■ 5.100万円の“救済措置”もある
7年に延びると、「7年前の少額贈与まで全部対象?」と思われがちですが、
実は次のような緩和措置が設けられています👇
💡 相続開始前3年を超える4年間(つまり4〜7年前)の贈与については、
合計100万円までは加算しなくてよい。
つまり、長期的に少額ずつ贈与してきた場合は、
その一部は相続税に影響しません。
■ 6.生前贈与の「計画性」がますます大事に
この改正により、
これまでのように「亡くなる直前にまとめて贈与する」方法は
節税効果がほとんどなくなります。
その代わりに、
- 若いうちからコツコツ贈与する
- 教育資金・住宅取得資金などの非課税制度を組み合わせる
- 信託や生命保険などを併用する
といった「長期的で目的のある贈与」が求められる時代になります。
■ 7.“節税”より“想いの伝わる贈与”へ
税制改正の背景には、「世代間での資産移転を促す」という政策意図もあります。
つまり、
「子や孫に早めに財産を譲ること」そのものを後押しするための制度設計です。
これからの贈与は、
単なる節税テクニックではなく、
💬「どんな想いで、どの財産を、誰に、いつ渡すか」
を考える“人生設計の一部”として位置づけることが大切です。
■ 8.まとめ:新しい7年ルールのポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改正前 | 相続開始前3年以内の贈与を相続財産に加算 |
| 改正後 | 相続開始前7年以内に拡大(2024年以降の贈与から) |
| 緩和措置 | 3年を超える4年間分は100万円まで非加算 |
| 完全適用時期 | 2031年1月1日以降の相続から |
| 対応策 | 長期的・計画的な贈与へシフト |
参考資料:
- 財務省「令和5年度税制改正の大綱」
- 国税庁「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
- 日本税理士会連合会・税制改正資料(2024年)
- 東京税理士会「令和7年度第5回会員研修会資料」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
