確定拠出年金(DC)は「自分年金」を育てるための大切な仕組みですが、年齢やライフステージによって適切な運用方法は変わります。
20代・30代の若手と、50代前後の中高年では「リスクを取れる時間」も「資産を守りたい気持ち」も異なります。
今回は、ライフステージに応じた資産配分の考え方を整理し、どんな調整が有効かを具体的に紹介します。
若手世代(20代〜30代):リスクを取れる時期
特徴
- 老後まで30年以上の時間がある
- 毎月の掛け金が少額でも「複利効果」が大きく働く
- 給与上昇や転職によって掛け金を増やせる可能性もある
戦略
若い世代は、多少の値下がりがあっても時間をかけて回復できるため、株式比率を高めに設定するのが合理的です。
例:
- 国内株式 30%
- 外国株式 50%
- 国内債券 10%
- 外国債券 10%
特に外国株式(米国株・全世界株インデックス)は、長期的に成長を取り込みやすい資産です。
ポイント
- 積極的に「投資信託」を取り入れる
- リスクに慣れるため、最初は少額から配分変更してみるのもOK
- 定期預金だけに偏らない
中堅世代(40代):バランスを取り始める時期
特徴
- 老後まで20年程度の時間がある
- 教育費や住宅ローンなど支出も多い
- 投資経験が増え、相場の変動にも慣れてくる
戦略
株式だけでなく、債券やバランス型投信も取り入れて安定性と成長性の両立を図る段階です。
例:
- 国内株式 25%
- 外国株式 35%
- 国内債券 20%
- 外国債券 20%
外国株式の比率は維持しつつ、債券で下支えを強化。
ポイント
- 相場急落時に慌てて売らないように「リバランス」を意識
- 教育費や住宅ローン返済など「現金が必要な時期」とのバランスも重要
- 新商品が追加されていないか年1回チェック
中高年世代(50代〜60代):資産を守る時期
特徴
- 定年まで10〜15年程度しか残っていない
- 大幅な下落が起きた場合、回復する「時間」が不足
- 退職金や他の資産と合わせた総合的な老後資金を意識する時期
戦略
この世代では、安全資産の比率を高めて守りに入ることが重要です。株式中心の配分はリスクが大きすぎます。
例:
- 国内株式 20%
- 外国株式 20%
- 国内債券 30%
- 外国債券 30%
必要に応じて定期預金や保険商品を組み込み、急落リスクを抑えましょう。
ポイント
- 「退職まであと何年か」を基準に配分を調整
- 配分変更で将来の掛け金の振り向け先を守り重視に
- 他の老後資金(退職金、公的年金、預貯金)とのバランスも確認
ライフイベントと配分の見直し
ライフステージだけでなく、人生の大きな出来事も資産配分を見直すきっかけになります。
- 結婚・出産:支出が増えるため、無理のない掛け金設定に調整
- 住宅購入:頭金やローン返済に備え、リスク資産を一部縮小
- 子どもの独立:支出が減るタイミングで、再び株式比率を増やす余地も
- 定年直前:確実に守る資産と、運用を続ける資産を分ける
ありがちな失敗例
- 若手が安全資産だけに偏る
→ インフレに負けて、老後資産が育たない。 - 中高年が株式比率を放置
→ 退職直前に相場急落で大きな損失を抱えるリスク。 - ライフイベントを考慮せずに固定化
→ 教育費や住宅ローンとの両立に失敗。
実践のポイント
- 年1回の点検で「資産配分が崩れていないか」を確認
- スイッチングで資産を修正
- 配分変更で今後の掛け金の行き先を調整
- ライフイベントの節目に必ず見直し
まとめ
- 若手は「リスクを取れる時間」を味方にして、株式中心に積極運用。
- 中堅世代は成長性と安定性のバランスを意識。
- 中高年は「守り」を優先し、資産を減らさないことを重視。
- ライフイベントのたびに点検し、柔軟に調整することが成功のカギ。
確定拠出年金は「長距離マラソン」です。ペース配分を誤らず、ライフステージごとに戦略を変えることで、安心して老後を迎えられる資産形成が可能になります。
👉 次回(第6回・最終回)は、「自分年金を育てる習慣づくり」として、これまでの総まとめと「続けるための仕組み化」について解説します。
(参考 2025年9月13日付日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
