第4回 高齢者の「住み替え費用」徹底ガイド 敷金・礼金・引越し・介護サービス費まで総額をつかむ

FP
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高齢期の住み替えは、体力や健康状態だけで判断するものではありません。実際には、住み替えにかかる費用をどれだけ早く把握し、無理のない計画を立てられるかが大きなポイントになります。

「子どもの近くに移住したい」「医療が充実した都市部の住まいに変えたい」と考えても、敷金・礼金、引越し費用、高齢者向け住宅の入居金、介護サービスの利用料など、費用は多岐にわたります。
本稿では、高齢者が住み替える際に必要となる代表的な費用を整理し、総額の目安と注意点を解説します。

1. 高齢者の住み替えで発生する主な費用

住み替え時に必要となるのは、大きく次の5つです。

  1. 賃貸住宅の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料)
  2. 引越し費用(荷物量・距離・作業内容で変動)
  3. 高齢者向け住宅の入居費・月額費
  4. 家具・家電の買い替え費用
  5. 介護サービス費(要介護度に応じて変動)

これらを組み合わせると、住み替えの総額は数十万円〜数百万円の幅があります。


2. 賃貸住宅の初期費用

都市部で高齢者が住み替える際、一般的な賃貸(UR、高齢者歓迎の民間物件に含む)では以下の費用が発生します。

◆ 敷金

家賃1〜2カ月が一般的。URは礼金なし敷金2カ月が標準。

◆ 礼金

家賃1〜2カ月。ただし最近は「礼金ゼロ物件」も増加。

◆ 仲介手数料

家賃1カ月+税が上限。

◆ 初期費用の合計目安

家賃10万円の物件なら、
約30〜40万円前後が相場です。

※高齢者の場合、保証会社の利用が必須となるケースが多く、追加費用が生じることもあります。


3. 引越し費用

引越し費用は、荷物の量・移動距離・オプションで大きく変動します。

◆ 同一市内

3〜10万円(単身)
8〜20万円(2人分の荷物)

◆ 他県への移動

10〜30万円(単身)
20〜50万円(2人分)

◆ 高齢者特有の追加費用

  • 家具の解体・組立
  • 家電の取り外し(エアコン等)
  • 不用品の処分代
  • 荷造り・荷解きの代行サービス

高齢者の住み替えでは不用品が大量に発生しがちで、処分費用が5〜15万円発生するケースも珍しくありません。


4. 高齢者向け住宅の費用構造

住み替え先として選ばれやすい以下の住宅について、入居時と月額費を整理します。

(1)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

  • 入居一時金:0〜数十万円(ゼロの物件が多い)
  • 家賃:6〜15万円
  • 共益費:1〜3万円
  • 生活支援サービス費:1〜3万円

月額合計は 10〜20万円が一般的。

(2)介護付有料老人ホーム

  • 入居一時金:0〜数百万円
  • 月額費:20〜35万円程度

介護体制が手厚い分、費用は高くなります。

(3)シニア向け分譲マンション

  • 購入費用:数千万円〜
  • 管理費・修繕積立:月2〜5万円
  • 生活支援サービス費:0.5〜2万円

「持ち家を売却して買い替える」場合は資産全体の整理も必要です。


5. 家具・家電の買い替え費用

高齢者の住み替えでは、次の理由で買い替えが発生しやすいです。

  • 古い家電が重く、安全性が低い
  • ワンルーム・1LDKへの住み替えでサイズが合わない
  • ベッド・照明・カーテン等の買い替え

5〜20万円前後を見込んでおくと安心です。


6. 介護サービス費

要介護度に応じて大きく変動します。

◆ 介護保険の利用者負担

原則1〜3割。

例として「要介護2・自宅での介護サービスを利用」の場合:

  • 訪問介護
  • デイサービス
  • 訪問看護
  • 福祉用具レンタル

などを組み合わせた場合、
自己負担は月1〜3万円程度が一般的です。

ただし、「都市部は介護サービスが混み合っている」ため、必要なサービスが確保できないケースが増えています。


7. 住み替えの総額を試算すると?

典型的な例で総額をまとめると、以下のような目安になります。

◆ 都市部の賃貸(家賃10万円)に住み替え

  • 初期費用:30〜40万円
  • 引越し+不用品処分:10〜25万円
  • 家具・家電:5〜15万円
  • 合計:45〜80万円程度

◆ サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

  • 初期費用:0〜20万円
  • 引越し+不用品処分:10〜25万円
  • 家具・家電:5〜15万円
  • 合計:15〜60万円程度

◆ 介護付有料老人ホーム

  • 入居一時金:0〜300万円以上
  • 引越し等の諸費用:10〜30万円
  • 合計:10〜300万円超
    (施設の価格帯により大きく異なる)

8. 住み替えを成功させるためのポイント

  • 早めに住まい・費用・医療圏を調べる
  • 物件見学は「日当たり」「段差」「浴室」など安全性を重視
  • 親の荷物は段階的に整理する
  • 子どもが付き添い、現地の医療・介護情報をチェック
  • 資産・契約・住所変更の一覧化(管理ノートの作成)

住み替えは“引越し”ではなく、老後の生活基盤の再設計と捉えることが重要です。


結論

高齢者の住み替えには、敷金・礼金から引越し費用、介護サービス費まで、多くの費用が絡みます。無理のない計画を立てるには、初期費用+月額費+医療・介護費の3つをセットで把握することが不可欠です。

また、親の意思・健康状態・生活のしやすさを尊重しつつ、子ども側の負担も見据えた総合的な判断が求められます。住み替えを早めに検討することで、より安全で自分らしい老後を実現しやすくなります。


出典

厚生労働省「介護保険制度」、国土交通省「住宅関連統計」、介護事業者各社資料 ほか


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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