高齢の親の生活を支えるうえで避けて通れないのが「資産管理」です。年金収入だけでなく、預貯金、不動産、生命保険、医療費の支払いなど、手続きは多岐にわたります。特に判断能力が低下する前に準備を進めないと、家族が代わりに手続きできない状況に陥ることもあります。
本稿では、親の資産管理で必ず押さえておきたい制度と準備について整理します。
1. なぜ早めの資産管理が必要なのか
- 認知症になると銀行取引が制限される
- 不動産の売却や契約ができなくなる
- 介護費・医療費の支払い方法を家族が管理しにくい
- 後から備えると「手遅れ」になるケースが多い
- 家族間のトラブル防止のためにも透明性が必要
特に銀行では、本人の判断能力に疑義があると口座が凍結されることがあります。
2. 高齢期の資産管理に使える制度
(1)任意後見制度
本人が元気なうちに、将来の財産管理を他の人に任せる仕組み。
(2)家族信託
柔軟に財産管理・承継を設計できる新しい仕組み。認知症対策として利用が増加。
(3)成年後見制度(法定後見)
判断能力が低下した後に裁判所が後見人を選ぶ制度。
ただし、費用や制約が大きいため“最後の手段”として利用されることが多い。
(4)銀行の代理人制度
あらかじめ家族を代理人に登録しておくと、認知症発症後でも預金の出し入れが可能。
3. 親子で必ず共有しておくべき情報
- 銀行口座(メインとサブ)
- 年金の受取先
- 保険証券
- 不動産の所在地
- 介護費用の支払い方法
- 医療機関の情報
- 緊急連絡先
- 紙とデジタルの両方で保管
情報共有をしておくことで、急な入院・介護でもスムーズに対応できます。
4. トラブルを避けるためのポイント
- お金の扱いは「見える化」する
- 兄弟姉妹にも状況を定期的に共有
- 契約は「親の意思」を尊重
- 成年後見や家族信託を必要に応じて組み合わせる
資産管理は「お金の管理」だけでなく、「親の人生の安心」を守る行為です。
結論
親の資産管理は、元気なうちに家族で話し合うことが何よりの備えになります。認知症になるとできる手続きが制限されるため、任意後見や家族信託などの制度も早期検討が重要です。家族の協力と透明な情報共有が、老後生活の安定につながります。
出典
内閣府「成年後見制度」、金融機関の代理人制度資料 ほか
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
