日本の空き家問題と対策(第5回・最終回)
これまでのシリーズでは、空き家が増える背景、法律の仕組み、実際の事例を紹介してきました。最終回となる今回は、「結局、空き家を持ったらどう考えればいいのか?」を整理します。
空き家は持ち主にとって負担になることもあれば、工夫次第で資産や地域の役に立つ存在にもなります。ここでは、空き家と向き合うための基本的な視点や行動のチェックポイントをまとめます。
1. 空き家を放置するリスク
まず知っておきたいのは、空き家を「そのままにする」ことのリスクです。
- 税金の優遇が外れる
 → 管理不全や危険な状態になると、固定資産税の軽減措置がなくなり、税負担が増える。
- 老朽化が進む
 → 売却や賃貸が難しくなるだけでなく、修繕や解体にかかる費用も増える。
- 地域への悪影響
 → 倒壊や火災、不法侵入などの危険が高まり、近隣とのトラブルにもつながる。
「とりあえず置いておけばいい」という選択肢は、年々リスクが高まっているといえます。
2. 空き家の選択肢 ― 4つの方向性
空き家の扱い方には、大きく分けて4つの方向性があります。
- 売却する
- 買い手がつけば現金化でき、管理の手間から解放される。
- 地域や建物の状態によっては値がつきにくいこともある。
 
- 賃貸に出す
- 家賃収入を得られ、管理の面でも「人が住むことで家が維持される」メリットがある。
- DIY賃貸や定期借家など、柔軟な方法もある。
 
- リフォーム・建替えして使う
- 自分や家族が住む場合に有効。
- 費用がかかるため、資金計画と老後生活のバランスを考える必要がある。
 
- 解体する
- 将来の利用や売却を見据え、更地にする。
- 固定資産税は上がるが、倒壊リスクや管理の手間はなくなる。
 
👉 どれが正解かは家庭の状況によって異なります。重要なのは「自分たちに合った選択肢を早めに決めること」です。
3. 家族で話し合うことの大切さ
空き家の行方を決めるうえで最も大切なのは「家族で話し合う」ことです。
- 親が元気なうちに「実家をどうするか」を共有しておく。
- 相続が発生する前に方向性を決めておけば、トラブルを防げる。
- 「売りたい人」「残したい人」がいる場合は、代償金など柔軟な方法で調整できる。
空き家問題の多くは「誰も決めないまま時間が経つ」ことが原因です。意思を確認し、方向性を共有するだけで、後々の選択肢が広がります。
4. 行動に移すときのチェックポイント
実際に空き家をどうするか検討する際に、確認しておきたい項目をまとめました。
✅ 家の所在地・現況(老朽化の度合い、修繕の必要性)
✅ 誰が相続するのか、相続人の意向はどうか
✅ 固定資産税の課税状況(住宅用地特例の有無)
✅ 登記簿や評価額(相続税評価と市場価格の差)
✅ 地域の需要(売れるのか、貸せるのか)
✅ 解体・修繕・リフォームにかかる費用
✅ 自治体の補助金や空き家バンクの有無
これらを整理することで、現実的な選択肢が見えてきます。
5. 空き家を「地域資源」として活かす発想
最近は「空き家=迷惑」という考え方だけでなく、「空き家=資源」として活かそうとする取り組みも増えています。
- 子育て世帯や移住者向けの住宅
- シェアハウスや学生寮
- コワーキングスペースや地域交流の拠点
自分や家族が住まなくても、地域のニーズに応じて価値を生み出す方法があります。こうした事例を参考にすれば、空き家を前向きに考えるヒントになるでしょう。
おわりに
5回にわたって空き家問題を取り上げてきました。
- 空き家はなぜ増えるのか(第1回)
- 法律や制度の変化(第2回)
- 実際の相談事例(第3回・第4回)
- 最後に、どう向き合うか(第5回)
空き家は「負担」か「資産」か、その分岐点に私たちは立たされています。
放置せず、早めに方向性を決め、家族や地域と一緒に解決策を探していくことが大切です。
このシリーズが、皆さんが空き家と向き合うきっかけになれば幸いです。
📌 参考資料:FPジャーナル 2025年4月号「日本の空き家の現況と対策」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
 
  
  
  
  