景気回復という言葉が報じられる一方で、現場の実感はどうでしょうか。
大企業の決算は改善し、株価も堅調に推移しています。しかし、地域経済を支える中小・零細企業の実態は、それとは異なる様相を示しています。
税理士法人の現場から見える景気の実像を整理し、いま何が課題なのか、そしてどのような対応が求められているのかを考えます。
1.数字が示す厳しい実態
税理士法人の顧客データによれば、2025年に廃業・閉業した企業は約4%を超え、前年よりも増加しています。さらに、赤字企業の割合は約44%と高止まりの状況です。
大手信用調査会社のデータではここまで深刻に見えない場合もありますが、その多くは従業員50~300人規模の企業が中心です。
一方で、税理士事務所が日常的に接するのは、従業員1~50人規模の小規模事業者です。この層の経営環境が特に厳しいという点が重要です。
景気回復の恩恵が企業規模によって偏在している構図が浮かび上がります。
2.中小製造業が抱える構造的問題
とりわけ厳しいのが、小規模な製造業です。
・新製品開発に投資する余力が乏しい
・3年前、5年前と同じ製品を作り続けている
・オーダーメード型の受注が多く合理化が難しい
価格転嫁は徐々に進んでいるとはいえ、収益力を抜本的に高めるには至っていません。
大企業のように大量生産・自動化・AI導入で効率化できる環境とは異なり、個別対応が中心の小規模製造業では設備投資の効果が限定的です。
3.人手不足という最大の制約
最大の課題は人手不足です。
募集をかけても応募が集まらない。
ロボットやAIを導入したくても、投資資金も専門人材も不足している。
とりわけ団塊世代が経営する企業では、後継者難が廃業につながるケースも少なくありません。
製造業だけでなく、飲食、運送、介護、建設など、労働集約型産業全般に影響が及んでいます。
4.外国人労働力という選択肢
人手不足対策として、外国人労働者の活用が現実的な選択肢になりつつあります。
しかし、円安の影響もあり、日本の魅力は相対的に低下しています。かつては日本志向が強かった国でも、他国へ向かう動きが強まっています。
単に制度を整えるだけでなく、受け入れ体制の整備や待遇改善が求められます。
5.税理士法人の役割の変化
ここで重要になるのが、税理士法人の役割です。
税務申告だけでなく、
・人材確保支援
・IT戦略の助言
・経営管理体制の整備
・資金繰り支援
といった経営全般への関与が期待されています。
小規模企業単独では解決できない課題に対し、地域の税理士法人がハブとなり、経営支援を行う体制づくりが必要です。
税理士事務所自身も小規模のままではなく、一定規模に集約し、専門性を高める動きが進む可能性があります。
6.地域経済を支える視点
中小企業が元気にならなければ、地域経済は活性化しません。
株価やGDPの数字ではなく、顧問先の試算表や資金繰り表にこそ、現実があります。
景気回復の議論をする際には、「どの規模の企業の話なのか」という視点が不可欠です。
結論
日本経済全体に明るさが見える局面であっても、小規模な中小・零細企業の経営環境は依然として厳しい状況にあります。
人手不足、投資余力の不足、後継者難――これらは一時的な問題ではなく、構造的な課題です。
税理士法人は、単なる税務専門家にとどまらず、地域経済の伴走者としての役割を担うことが求められています。
中小企業支援の質が、これからの地域経済の持続可能性を左右するといえるでしょう。
参考
日本経済新聞 朝刊 2026年2月16日
月曜経済観測「税理士法人から見た景気 中小・零細の経営難深刻」
(2026年2月16日付朝刊)

