家事按分は、税務調査で必ずと言ってよいほど確認される論点です。
調査官の質問は、一見すると素朴で形式的なものに見えることがありますが、その背後には明確な確認目的があります。
本稿では、税務調査の現場で実際によく聞かれる家事按分に関する質問を取り上げ、
「なぜその質問が出るのか」「どこを見られているのか」という視点から整理します。
質問1 この費用は、具体的にどのように使っていますか
最初に聞かれることが多いのが、使用実態に関する質問です。
・自宅のどこで仕事をしていますか
・その部屋は、私生活では使っていませんか
・平日は何時間くらい仕事に使っていますか
調査官は、この質問を通じて、
その支出に本当に必要経費部分が存在するのか を確認しています。
抽象的な説明ではなく、
「いつ」「どこで」「どのように」使っているのかを具体的に説明できるかが重要です。
質問2 按分割合は、どのように決めましたか
次に必ず聞かれるのが、按分割合の決定根拠です。
・なぜ30%なのですか
・50%にした理由は何ですか
・床面積で計算したのですか、時間ですか
ここで調査官が見ているのは、
数字そのものではなく、考え方の合理性です。
正解の割合があるわけではありませんが、
「なんとなく」「前年と同じ」といった説明は、
合理的な根拠とは評価されません。
質問3 この割合は、毎年同じですか
按分割合の継続性も、よく確認されるポイントです。
・前年も同じ割合でしたか
・途中で変更した理由はありますか
この質問の意図は、
税額調整のために恣意的に割合を変えていないか を確認することにあります。
業務内容や働き方が変わったのであれば問題ありませんが、
その場合でも、変更理由を説明できる必要があります。
質問4 業務専用のものは、ありますか
家事按分との対比として、
「業務専用」と言えるものの有無も確認されます。
・仕事専用の携帯電話はありますか
・業務専用の部屋や机はありますか
この質問は、
「全部が按分対象なのか」「全額経費になるものはないのか」を整理するためのものです。
業務専用のものがあるにもかかわらず、
混在している支出をすべて按分していると、
処理の一貫性に疑問を持たれることがあります。
質問5 私的利用は、どの程度ありますか
調査官は、私的利用の存在を前提に質問します。
・休日は使っていますか
・家族も使いますか
・仕事以外ではどんな用途ですか
ここで重要なのは、
私的利用があること自体は問題ではない という点です。
問題になるのは、私的利用があるにもかかわらず、
それを無視して全額経費としている場合です。
質問6 按分の根拠となる資料はありますか
最後に確認されるのが、説明を裏付ける資料の有無です。
・間取り図
・使用時間のメモ
・走行距離の記録
・自分なりの計算メモ
必ずしも正式な書類である必要はありませんが、
後から再現できる形で考え方が残っているか が重要です。
記録があるかどうかで、調査対応の難易度は大きく変わります。
税務調査の質問は「否認前提」ではない
これらの質問は、最初から否認を目的として行われるものではありません。
調査官は、
「その処理が、家事費の原則と整合しているか」
を確認しているに過ぎません。
合理的な説明ができ、処理に一貫性があれば、
家事按分そのものが問題になることは多くありません。
結論
税務調査で聞かれる家事按分の質問は、
すべて「なぜその処理になったのか」を確認するためのものです。
・使用実態
・按分基準
・割合の合理性
・継続性
・説明資料
これらを意識して日頃から整理しておけば、
調査対応は決して難しいものではありません。
家事按分は、説明できて初めて成立する処理です。
調査官の質問は、その説明が可能かどうかを確認しているにすぎないのです。
参考
・所得税法 第45条
・所得税基本通達 45-1
・税のしるべ 2026年1月5日「第13回/家事費とは生活全般の費用、必要経費でなくとも控除できる場面も」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
