確定申告の誤りというと、「制度の理解不足」が原因だと思われがちですが、実務上は単純な記載ミスや計算ミスも少なくありません。内容自体は合っているのに、数字の入力違いや転記ミスによって、誤った申告になってしまうケースです。
国税庁が示している「誤りの多い事例」においても、こうした形式的なミスは毎年のように指摘されています。第8回では、なぜ記載ミスや計算ミスが起きやすいのか、その背景と防ぎ方を初心者向けに整理します。
記載ミスは「分かっている人」ほど起こしやすい
意外に思われるかもしれませんが、記載ミスや計算ミスは、確定申告にある程度慣れている人ほど起こしやすい傾向があります。
理由の一つは、「内容は理解しているから大丈夫」という油断です。制度の理解が進むほど、入力や確認を流れ作業として進めてしまい、細かなチェックを省略しがちになります。
初心者の方は慎重に確認する一方で、経験者ほど思い込みによるミスが増えるという側面があります。
桁違い・符号違いによるミス
記載ミスの中で特に多いのが、桁の入力違いや符号の付け忘れです。
例えば、金額を入力する際にゼロを一つ多く入れてしまったり、マイナスで入力すべき金額をそのまま入力してしまったりするケースがあります。自動計算が行われる場合でも、入力された数字が誤っていれば、計算結果も誤ったものになります。
見た目では気付きにくいため、提出後に誤りに気付くことも少なくありません。
転記ミスが起きる典型的な場面
源泉徴収票や各種証明書の数字を申告書に写す際、転記ミスが起こることがあります。
特に、複数の書類を見比べながら入力している場合や、似たような数字が並んでいる場合には注意が必要です。「見たつもり」「入力したつもり」になってしまい、結果として誤った数字が反映されることがあります。
自動計算への過信がミスを招く
最近の申告書作成環境では、入力に従って自動計算が行われるため、「計算ミスは起きない」と思われがちです。
しかし、自動計算はあくまで入力された内容をもとに行われます。前提となる金額や区分が誤っていれば、正しい結果は得られません。「機械が計算しているから安心」という過信が、確認不足につながることがあります。
控除や税額の「二重計上」「計上漏れ」
記載ミスの中には、控除や税額を二重に入れてしまうケースや、逆に入れ忘れてしまうケースもあります。
例えば、年末調整で処理された内容を、確定申告でもう一度反映させてしまう、あるいは「どこかで自動的に入っているだろう」と思い込み、必要な入力をしなかったといったケースです。
どこまでが自動反映で、どこからが自分で入力すべき部分なのかを整理しないまま進めると、こうしたミスが起こりやすくなります。
提出前の確認不足が最大の原因
記載ミスや計算ミスの多くは、提出前の確認不足に集約されます。
入力が終わった時点で安心してしまい、「全体を見直す」という工程を省略してしまうと、小さなミスがそのまま申告として確定してしまいます。特に、期限が迫っている場合には、確認作業を後回しにしてしまいがちです。
ミスを防ぐための実務的な工夫
記載ミスや計算ミスを防ぐためには、次のような工夫が有効です。
- 入力が終わったら一度時間を置いて見直す
- 金額の桁や符号を重点的に確認する
- 書類と申告書を一項目ずつ照合する
- 去年の申告内容と大枠を比較する
「早く終わらせる」よりも、「一度立ち止まる」ことが、結果として修正の手間を減らします。
結論
申告書の記載ミスや計算ミスは、誰にでも起こり得るものです。重要なのは、「ミスをしないこと」ではなく、「ミスを前提に確認する姿勢」を持つことです。
次回は、誤りに気付いた後の対応として、修正申告や更正の請求といった考え方を初心者向けに整理します。
参考
・国税庁「確定申告期に多いお問合せ事項(Q&A)
Q17 所得税等の確定申告の際に、誤りの多い事例について」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
