確定申告でよくある誤りの中でも、「本来は税金が安くなったはずなのに、控除を入れ忘れていた」というケースは少なくありません。これは、税金を少なく申告してしまう誤りとは逆に、税金を多く納めてしまう誤りです。
国税庁が示す「誤りの多い事例」においても、医療費控除や寄附金控除の入れ忘れ・計算誤りは、毎年必ず挙げられています。第4回では、これらの控除がなぜ入れ忘れられやすいのか、その背景を初心者向けに整理します。
所得控除は「自動で反映されない」
まず押さえておきたいのは、所得控除は自分で申告しなければ反映されないものが多いという点です。
年末調整で処理される控除もありますが、医療費控除や寄附金控除は、原則として確定申告で初めて反映されます。この違いを理解していないと、「控除はすでに入っているはず」と思い込み、結果として入れ忘れてしまいます。
医療費控除が入れ忘れられやすい理由
医療費控除は、控除の中でも特に入れ忘れが多いものです。その理由の一つは、対象となる医療費の範囲が分かりにくいことにあります。
医療費控除という名称から、「病院で支払った診療費だけが対象」と思われがちですが、実際には通院にかかった交通費なども含まれる場合があります。このような点を知らないまま、「大した金額ではない」と判断してしまうと、控除の対象になる医療費を集計しないまま申告を終えてしまうことになります。
医療費は「家族分を合算できる」ことを知らない
医療費控除では、生計を一にする家族の医療費を合算できるという特徴があります。しかし、この点を知らず、「自分の分しか対象にならない」と思い込んでいるケースも多く見られます。
その結果、家族分の医療費を含めれば控除の対象になるにもかかわらず、申告を見送ってしまうことがあります。制度の存在は知っていても、適用範囲を誤解していることが、入れ忘れの原因になります。
寄附金控除が難しく感じられる理由
寄附金控除については、「仕組みが複雑そう」「自分には関係ない」と感じてしまう人が少なくありません。
特に、ふるさと納税を行っている場合でも、「何もしなくても自動的に反映される」と思い込んでいるケースがあります。一定の手続きをしていない場合には、確定申告が必要になるにもかかわらず、その点を十分に理解しないまま申告を終えてしまうことがあります。
控除額の計算を途中で諦めてしまう
医療費控除や寄附金控除は、単に支払った金額をそのまま引けばよいわけではありません。一定の計算を経て控除額が決まります。
初心者の方の中には、「計算が面倒そう」「よく分からない」と感じて、途中で確認をやめてしまう人もいます。その結果、本来受けられる控除を見送ってしまうことがあります。
書類の整理が追いつかないまま申告してしまう
控除を受けるためには、支払ったことを確認できる書類が必要になります。しかし、医療費の領収書や寄附金の受領証明書が、日常の書類の中に埋もれてしまっていることも少なくありません。
申告期限が迫る中で、「書類がそろっていないから今回はやめておこう」と判断してしまい、結果として控除を入れ忘れるケースもあります。
入れ忘れを防ぐための考え方
所得控除の入れ忘れを防ぐためには、次のような考え方が有効です。
- 1年間で支払った医療費や寄附を一度すべて書き出す
- 控除の可否は後で判断する
- 書類が足りない場合でも、まずは確認する
「最初から完璧に理解しようとしない」ことが、結果的に入れ忘れ防止につながります。
結論
医療費控除や寄附金控除の入れ忘れは、制度の難しさよりも、「自分には関係ない」「面倒そう」という心理的なハードルが原因になっていることが多いといえます。
次回は、所得控除の中でもさらに誤りが多い、配偶者控除・基礎控除などの人的控除をテーマに整理していきます。
参考
・国税庁「確定申告期に多いお問合せ事項(Q&A)
Q17 所得税等の確定申告の際に、誤りの多い事例について」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
