確定申告とマイナンバー ― 情報連携時代の税務管理(確定申告・税制改正ナビ 第20回)

税理士
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2016年に導入されたマイナンバー制度は、いまや確定申告や年末調整を含む税務行政の中心的な仕組みとなりました。
税務署や自治体、金融機関、社会保険機関などの間で情報が自動的に連携され、
納税者は証明書や添付書類を提出しなくても、オンラインで申告・控除を受けられるようになっています。
本稿では、マイナンバー制度と確定申告の関係、今後進むデジタル税務の方向性を整理します。


マイナンバー制度の基本構造

マイナンバー(個人番号)は、行政手続きにおける「個人識別コード」です。
税・社会保障・災害対策の3分野で活用され、所得・保険・年金・給付などの情報を一元的に管理する目的があります。

【主な利用分野】

  • 税務:所得・控除・納税情報の管理
  • 社会保障:年金・医療・雇用保険・児童手当の給付
  • 行政サービス:給付金申請・証明書交付の簡素化

マイナンバーは、確定申告書の提出や口座登録、各種控除証明書の電子化に欠かせない基盤となっています。


確定申告でのマイナンバーの使われ方

確定申告において、マイナンバーは主に次の3つの場面で利用されます。

① 確定申告書への記載

確定申告書には、納税者本人および扶養親族のマイナンバーを記入します。
電子申告(e-Tax)の場合は、マイナンバーカードによる本人認証で代替されます。

② 控除証明書データの自動取得

生命保険料控除・地震保険料控除・ふるさと納税・国民年金など、
各種証明書のデータがマイナポータル連携を通じて自動取得されます。
紙の添付が不要になり、申告漏れや記載ミスの防止につながっています。

③ 金融口座・所得情報の自動照合

マイナンバーと金融機関口座の紐づけが進むことで、
利子・配当・株式譲渡益などの金融所得情報が自動的に税務当局へ報告されます。
これにより、投資所得を含む総合的な課税管理が可能となります。


マイナンバーカードとe-Tax

e-Tax(電子申告)では、マイナンバーカードが「電子的な身分証明書」として機能します。

【利用手順の概要】

  1. マイナンバーカードを取得
  2. パソコンまたはスマートフォンで「マイナポータル」と連携
  3. e-Taxの確定申告書作成コーナーでカード認証
  4. 各種控除証明書データを自動反映
  5. 申告書をオンライン提出

マイナンバーカードを使えば、税務署への持参や郵送を省略でき、
申告内容を即時に確認できるなど利便性が高まります。


金融口座とマイナンバーの紐づけ

2024年から「公金受取口座登録制度」が本格運用され、
マイナンバーを通じて公的給付・還付金の受取口座を一元管理できるようになりました。
税務面では、今後以下のような連携が想定されています。

  • 還付金の自動入金化(口座登録済みなら指定不要)
  • 金融所得情報の自動照合(利子・配当・譲渡益など)
  • マイナンバー付与済み口座の統合管理

これにより、所得の捕捉精度が高まり、将来的には「申告不要型課税」へ移行する基盤が整備されつつあります。


セキュリティとプライバシー

マイナンバー制度では、厳格な情報保護措置が設けられています。

【主なセキュリティ対策】

  • 行政機関ごとの「情報連携キー」で分散管理(1つのIDで全情報を閲覧できない)
  • マイナポータルによるアクセス履歴の確認機能
  • 通信の暗号化と本人認証(ICチップ+暗証番号)
  • 不正利用が疑われた場合のカード一時停止機能

個人番号は特定個人情報として法律で保護されており、
税務関係以外の目的での利用・提供は禁止されています。


今後の方向性 ― 自動申告時代へ

2026年以降、マイナンバー制度を軸とした「所得情報自動反映システム」が段階的に導入予定です。

  • 給与・年金・保険・投資収入などの所得情報が自動集約
  • 控除証明書・扶養情報も自動反映
  • 国税・地方税・社会保険料の一括管理

これにより、「申告不要型の確定申告」が一部層から実現する見通しです。
同時に、個人事業主・フリーランス向けにも、AIによる帳簿連携や控除自動適用の仕組みが整備されつつあります。


結論

マイナンバー制度は、税務行政の効率化だけでなく、
納税者自身の手続きを簡素化し、正確で公平な課税を実現するための基盤です。
今後は、マイナンバーを活用した「自動入力・自動控除・自動還付」の時代が到来します。
一方で、個人情報保護への理解と、マイナンバーカードの安全な管理も不可欠です。
制度を正しく理解し、活用することが、これからのデジタル税務時代を生きる納税者の新たなリテラシーといえるでしょう。


出典
・デジタル庁「マイナンバー制度の概要」
・国税庁「マイナンバーと税務手続」
・マイナポータル公式サイト
・金融庁「公金受取口座登録制度」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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