電子申告(e-Tax)の普及とともに、確定申告の仕組みはここ数年で大きく変化しました。
その中心にあるのが「マイナポータル連携」です。
従来は紙で添付していた生命保険料控除証明書や医療費通知書などを、
マイナポータル経由で自動取得・自動入力できる仕組みが整備され、
控除申告の手間が大幅に削減されています。
今回は、マイナポータル連携を使った確定申告の実務と、今後の制度動向を解説します。
マイナポータル連携とは
マイナポータルとは、政府が運営する個人向けオンライン窓口で、
年金・医療・税・子育てなどの行政情報を一元的に確認できる仕組みです。
このマイナポータルとe-Taxを連携させることで、
各金融機関・保険会社・公的機関が発行する「控除証明書データ」を自動的に取得し、
確定申告書に自動反映させることが可能になります。
【代表的な連携先】
- 生命保険会社(生命保険料控除証明書)
- 国民年金機構(社会保険料控除)
- 地震保険会社(地震保険料控除)
- 金融機関・共済組合(住宅ローン控除、共済掛金控除)
- 医療保険者(医療費通知情報)
- 自治体(ふるさと納税寄附金証明書)
これらのデータは、申告書に自動入力され、添付省略が認められる仕組みになっています。
利用開始の手順
① マイナンバーカードと暗証番号を準備
マイナンバーカードを取得し、利用者証明用電子証明書(暗証番号4桁)を設定しておきます。
② マイナポータルにログイン
https://myna.go.jp にアクセスし、「マイナンバーカード方式」でログインします。
③ 「情報連携先」を登録
利用者情報メニューから「控除証明書等のデータ連携を行う事業者」を選び、
生命保険会社・共済・年金機構などを登録します。
④ e-Taxと連携
国税庁「確定申告書等作成コーナー」から「マイナポータル連携で控除証明書を取得」を選択し、
ログインを許可すると自動でデータが取り込まれます。
これで、控除証明書の入力が不要になり、申告書に自動反映されます。
自動取得できる控除証明書の範囲
令和6年度時点で対応している控除証明書は以下の通りです。
| 区分 | データ提供元 | 自動反映内容 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 各保険会社 | 新旧制度別・契約区分別金額 |
| 地震保険料控除 | 損害保険会社 | 支払保険料と控除限度額 |
| 社会保険料控除 | 国民年金機構、健保組合 | 支払済金額(本人分・家族分) |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 中小機構・国民年金基金連合会 | 掛金支払額 |
| 医療費控除 | 医療費通知(健康保険組合・共済) | 年間医療費の自己負担額 |
| 寄附金控除 | 自治体(ふるさと納税) | 寄附金額・寄附先情報 |
一度連携設定をしておけば、翌年度以降も同じ事業者のデータを自動取得できます(要再承認)。
実務でのメリット
- 入力ミス・漏れの防止
保険料や寄附金の金額が自動で反映されるため、転記ミスがなくなる。 - 証明書の添付・提出が不要
紙の控除証明書を提出しなくても控除が適用される。 - 控除額の自動計算
旧制度・新制度の区分も自動で判定され、正しい控除額が算出される。 - 還付までの期間短縮
データ処理の効率化により、e-Tax申告の還付スピードが向上。
電子申告の「控除証明書添付省略」の基盤となる仕組みです。
実務上の注意点
- 一度連携設定しても、翌年に再承認が必要な場合がある(保険会社によって有効期限が異なる)
- 家族分の控除証明書は別名義では連携不可(本人名義のみ)
- 対応していない金融機関・共済も存在(紙証明書の添付が必要)
- 医療費控除は通知データだけでは不足する場合があり、明細を別途入力する必要あり
- 確定申告期間直前はアクセス集中により取得遅延が発生することも
事前に各事業者のデータ提供スケジュールを確認しておくことが大切です。
今後の展望
令和7年度税制改正では、マイナポータル連携の拡張が予定されています。
具体的には、
- 証券会社・金融機関の投資損益情報との連携
- 教育費控除・扶養情報の自動反映
- 共済・保険・医療・寄附データの一元化
が順次実現予定です。
政府は2026年以降、「申告不要型の所得税控除自動適用システム」を構想しており、
マイナポータルが確定申告の中核インフラになる見通しです。
結論
マイナポータル連携は、確定申告の電子化を支える最も実務的な仕組みです。
一度設定すれば、毎年の控除証明書入力の手間が省け、申告漏れを防ぐことができます。
特に生命保険料控除・iDeCo・ふるさと納税など、複数の控除を併用する人にとっては、
「正確・迅速・ペーパーレス」な申告を実現する大きな助けとなります。
これからの確定申告は、「紙を集める」時代から「データが自動で集まる」時代へ。
その第一歩として、マイナポータル連携の設定を早めに済ませておくことが重要です。
出典
・国税庁「確定申告書等作成コーナー」
・デジタル庁「マイナポータル連携による控除証明書データ提供」
・国民年金機構「電子的控除証明書制度について」
・金融庁「電子データ連携強化に関するガイドライン」
・令和7年度税制改正大綱(2024年12月)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
