老後資金づくりの制度として、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)に注目が集まる一方で、企業型確定拠出年金(企業型DC)の位置づけは十分に理解されていないケースも少なくありません。
しかし、企業に勤めている人にとっては、企業型DCは老後資金準備の中核となり得る制度です。2026年は、企業型DC・iDeCoともに制度拡充が続き、これまで以上に活用の幅が広がります。本稿では、制度改正のポイントを整理しながら、企業型DCを含めた老後資金準備の考え方を解説します。
確定拠出年金(DC)の基本構造
確定拠出年金(DC)は、毎月一定額を拠出し、その資金を自ら運用して老後資金を形成する私的年金制度です。
DCには、大きく分けて「企業型DC」と「個人型DC(iDeCo)」の2種類があります。
企業型DCは、企業が制度を導入し、会社が掛金を拠出する仕組みです。一方、iDeCoは個人が自ら加入し、掛金を全額自己負担で拠出します。
加入者数を見ると、企業型DCは800万人超と、iDeCoの加入者数を大きく上回っています。実際には、すでに多くの勤め人が企業型DCを通じて老後資金づくりを行っています。
税制優遇の違いと共通点
DCの大きな特徴は、税制面での優遇措置です。
運用期間中の運用益は、企業型DC・iDeCoともに非課税となります。この点はNISAと共通しています。
一方で、掛金拠出時の税制優遇には違いがあります。
iDeCoの場合、拠出した掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税の負担が軽減されます。これがiDeCoの最大の特徴です。
企業型DCでは、原則として会社が掛金を拠出するため、従業員自身の所得控除は発生しません。ただし、従業員が給与から掛金を上乗せする「マッチング拠出」を行う場合、その上乗せ分は所得控除の対象となります。
2026年4月の改正:マッチング拠出の制限緩和
2026年4月から、企業型DCにおけるマッチング拠出のルールが見直されます。
これまで、従業員が上乗せできる掛金額は「会社が拠出する掛金額まで」という制限がありました。この制限が撤廃され、会社の拠出額が少ない場合でも、個人の判断で拠出上限まで掛金を積み立てることが可能になります。
現行では、企業型DCの拠出上限は月5万5,000円です。今回の見直しにより、制度上の枠を最大限活用しやすくなります。
企業型DCを導入しているものの、会社拠出額が少ないために十分活用できていなかった人にとっては、大きな制度改善といえます。
2026年12月の改正:拠出上限額の引き上げ
さらに2026年12月には、確定拠出年金全体の拠出上限額が引き上げられます。
物価上昇を踏まえた見直しで、企業型DCの拠出上限は月5万5,000円から月6万2,000円となります。iDeCoについても同額の引き上げが行われます。
自営業者など、これまで月6万8,000円が上限だったiDeCo加入者は、月7万5,000円まで拠出できるようになります。
また、企業年金の有無によって細かく分かれていた会社員の拠出上限についても、「企業年金等の掛金と合算して月6万2,000円」という形に整理され、制度が分かりやすくなります。
企業型DCとiDeCoは併用できない
注意点として、企業型DCのマッチング拠出とiDeCoは併用できません。
企業型DCに加入している場合、マッチング拠出を選ぶか、iDeCoに加入するかのいずれかを選択する必要があります。
どちらが有利かは、勤務先の制度内容によって大きく異なります。
企業型DCでは、口座管理手数料を会社が負担するケースが多く、長期的にはコスト面で有利になる場合があります。一方、iDeCoは金融機関を自分で選べるため、商品ラインナップの自由度が高い点が特徴です。
70歳まで拡大するiDeCo加入年齢
2026年12月の改正では、iDeCoの加入可能年齢も引き上げられます。
これまで原則65歳未満だった加入年齢が、70歳未満まで拡大されます。一定の条件はありますが、60代後半でも積み立てを継続できる環境が整います。
長く働く人が増える中で、「より長く」「より多く」老後資金を準備できる制度設計へと変わりつつあるといえます。
おわりに
老後資金準備というと、NISAやiDeCoに目が向きがちですが、企業型DCは勤め人にとって最優先で検討すべき制度です。
制度改正をきっかけに、まずは自社の企業型DCの仕組みを確認し、マッチング拠出や拠出上限の活用余地を整理することが重要です。
働き方や収入状況に応じて、企業型DC・iDeCo・NISAをどう組み合わせるかを考えることが、これからの老後資金設計の基本となります。
参考
・日本経済新聞「確定拠出年金(DC)の制度拡充 老後資金、企業型でも備え」
・厚生労働省 確定拠出年金制度の概要資料
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

