国税庁が公表した令和6年分の相続税申告事績によると、相続税の課税割合が10.4%となり、初めて1割を超えました。基礎控除が引き下げられた平成27年分以降で最高水準となっており、相続税が一部の富裕層だけの税金ではなくなりつつある現状が浮き彫りになっています。
本稿では、今回の公表データを整理しながら、課税割合上昇の背景と、今後の相続対策を考えるうえでの視点について解説します。
相続税申告件数と課税割合の推移
令和6年中に亡くなった被相続人は約160万5千人と、前年から1.9%増加しました。このうち、相続税額のある申告書を提出した被相続人は約16万7千人で、前年から7.1%増加しています。
その結果、課税割合は10.4%となり、過去最高を更新しました。10人に1人以上が相続税の申告対象となる状況は、相続税がより身近な税になってきていることを示しています。
地価上昇と株高が与える影響
課税割合上昇の大きな要因として、地価の上昇と株価の高値推移が挙げられます。
都市部を中心とした地価上昇により、従来は基礎控除内に収まっていた不動産が、評価額の増加によって課税対象となるケースが増えています。また、株式市場の好調を背景に、有価証券を多く保有する世帯では相続財産全体が膨らみやすくなっています。
高齢者世代が長年にわたって形成してきた資産が、相場環境の影響を受けて一段と評価額を押し上げている点も見逃せません。
課税価格・申告税額の水準
令和6年分の課税価格の総額は約23兆3千億円、申告税額は約3兆2千億円と、いずれも平成27年分以降で最高となりました。
被相続人1人当たりの課税価格は約1億4千万円、申告税額は約1,946万円で、特に申告税額は過去10年間で最高水準です。
相続税の負担感が年々強まっていることが、数字の面からも読み取れます。
納税猶予制度の利用状況
事業承継税制や農地の納税猶予制度についても、一定の利用が続いています。
特例措置による株式等の納税猶予は約450人が適用を受け、猶予税額は約690億円にのぼりました。農地の納税猶予も1,000人を超える規模で利用されています。
一方で、医業継続に係る納税猶予の適用件数は少数にとどまっており、制度の活用には専門的な判断と事前準備が不可欠であることがうかがえます。
相続対策を考えるうえでの視点
今回のデータからは、相続税が資産規模の大きい一部の家庭だけの問題ではなくなっていることが明確になっています。不動産や株式を中心とした資産構成の場合、評価額の変動によって課税対象となるリスクは今後も続くと考えられます。
早い段階から財産の内容や評価額を把握し、分割方法や納税資金の確保、制度の活用可能性を検討しておくことが重要です。
結論
相続税の課税割合が1割を超えた背景には、地価上昇や株高、高齢者世代の資産増加といった構造的な要因があります。相続税は環境変化の影響を受けやすく、気付いたときには想定以上の負担になることも少なくありません。
今後は、相続を特別な出来事としてではなく、誰にとっても起こり得る現実的な課題として捉え、冷静に備えていく視点が求められます。
参考
・国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」
・税のしるべ「相続税の課税割合が1割超に、地価上昇や株高などで」(2026年1月5日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
