相続税の申告は、亡くなった方の財産を受け継ぐ人にとって避けられない手続きのひとつです。相続人同士での話し合いや財産の調査は大変ですが、それ以上に大切なのは「申告期限を守ること」。期限を過ぎてしまうと延滞税や加算税がかかり、余計な負担が増えてしまいます。
今回は、国税庁の最新パンフレット(令和7年分用) をもとに、相続税の申告期限と提出方法についてわかりやすく整理します。
1. 申告期限は「相続開始から10か月以内」
相続税の申告期限は、被相続人(亡くなった方)が亡くなった翌日から10か月以内と定められています。
具体例
- 亡くなった日:2025年6月11日
- 申告期限:2026年4月11日(土)
→ この場合、4月11日は土曜日なので、翌週の平日である 4月13日(月) が申告期限となります。
このように、期限日は「10か月後の同じ日」ではなく、休日との関係でずれることもあるため注意が必要です。
2. 期限を守らなかった場合のペナルティ
期限に遅れると、次のような追加負担が発生します。
- 無申告加算税
・原則15%。ただし期限後すぐ自主的に申告した場合は5%に軽減。 - 延滞税
・納期限からの日数に応じて課税。数か月を超えると年率7%前後になることもあります。
こうした余分な税負担を避けるためには、期限内に申告・納付を済ませることが最優先です。
3. 提出先は「被相続人の住所地の税務署」
申告書の提出先は、相続人の住所ではなく、亡くなった方の死亡時の住所地を管轄する税務署です。
たとえば相続人が全国に散らばっていても、提出先はあくまで被相続人の住所地の税務署。ここを誤解して相続人の居住地に提出してしまうと手続きが遅れてしまうため、注意が必要です。
4. 提出方法の3つの選択肢
相続税の申告書は、次のいずれかの方法で提出できます。
(1) 税務署の窓口に持参
最も一般的で確実な方法。窓口で日付印を押してもらえば、その日が提出日として扱われます。
(2) 郵送
郵便局の消印日が提出日として認められます。控えを返送してもらうには、返信用封筒と切手を同封する必要があります。
(3) e-Tax(電子申告)
インターネットを利用して申告書を送信する方法です。税理士に依頼した場合や、相続人が遠方に住んでいる場合に便利です 。
5. 相続人が複数いる場合の提出
相続人が複数いる場合は、共同で1通の申告書を提出するのが原則です。
ただし、相続人同士で連絡が取れない場合や意見が一致しない場合は、それぞれが別々に提出しても構いません。ただし内容に矛盾が出る恐れがあるため、できる限り「遺産分割協議書」を作成して共同で提出することが望ましいでしょう。
6. 添付書類の準備に要注意
相続税の申告書には、多数の添付書類が必要です。代表的なものを挙げると:
- 被相続人の戸籍謄本・住民票除票
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票
- 不動産登記事項証明書
- 預金残高証明書
- 生命保険金の支払証明書
- 相続人のマイナンバー確認書類
これらの書類は、発行に日数がかかることも多く、10か月という期限は想像以上にタイトです。相続発生後は速やかに収集を始めましょう。
7. 災害ややむを得ない事情で期限に間に合わない場合
地震や豪雨などの災害、または病気などのやむを得ない事情で期限までに申告できない場合は、申告期限の延長を申請できる制度があります。ただし自動的に延長されるわけではなく、所轄税務署への手続きが必要です。
8. 専門家に相談するメリット
相続税の申告は、不動産や株式の評価が関わると複雑になり、個人での対応が難しくなることがあります。
- 都市部に不動産を所有している
- 相続人が複数で協議が難航している
- 遺産総額が基礎控除を超えそう
こうした場合は、早めに税理士へ相談することで、期限内に適切な申告を行い、特例制度を活用した節税も可能になります。
まとめ
- 相続税の申告期限は「相続開始から10か月以内」
- 提出先は「被相続人の死亡時の住所地の税務署」
- 提出方法は「窓口・郵送・e-Tax」の3種類
- 相続人が複数の場合は原則「共同提出」だが、別々の提出も可能
- 添付書類の準備には時間がかかるため、早めの着手が不可欠
- やむを得ない事情がある場合は「期限延長制度」を申請できる
相続税の申告において、期限を守ることは最大のリスク回避です。
次回は「相続税がかかる財産・かからない財産」について整理していきます。
参考資料
- 国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
