「相続税」と聞くと、「自分には関係ない」「お金持ちだけの話」と思う方も少なくありません。しかし、高齢化や資産価格の上昇などを背景に、相続税の課税対象になる人は少しずつ増えています。
とはいえ、実際に相続税を申告する人は全体のごく一部。まずは「相続税とは何か」「誰が申告対象になるのか」を押さえることが第一歩です。
この記事では、国税庁が発行するパンフレット『相続税の申告のしかた(令和7年分用)』を参考に、一般の方にもわかりやすく解説します。
1. 相続税とは?
相続税は、亡くなった方(被相続人)の財産を相続や遺贈によって取得した人が負担する税金です。
対象となる財産には次のようなものがあります。
- 預貯金や現金
- 土地や建物などの不動産
- 株式・投資信託などの有価証券
- 生命保険金や死亡退職金(一定額まで非課税枠あり)
「遺産を受け取る=必ず相続税がかかる」というわけではなく、一定の控除を差し引いたうえで課税対象となる人だけが申告・納税を行います。
2. 相続税の申告が必要な人とは?
相続税の申告が必要かどうかは、まず 基礎控除額 と比べて相続財産が多いかどうかで判断します。
基礎控除額の計算式
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例:法定相続人が3人の場合
基礎控除額は 3,000万円+600万円×3=4,800万円。
相続財産の合計が4,800万円以下であれば、相続税の申告も納税も不要です。
3. 実際に課税される割合は?
国税庁の統計によると、相続税の課税割合は全体の 8~9%程度 にとどまっています。
つまり、相続が発生した人の約9割は、申告や納税が不要ということです。
ただし、都市部では地価が高いため、不動産を所有している家庭ほど課税対象になりやすい傾向があります。
4. 相続税の申告期限
相続税の申告・納付期限は、相続の開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10か月以内 です。
この期限までに、
- 相続税の申告書を作成し
- 税務署に提出し
- 納税を済ませる
必要があります。期限を過ぎると加算税や延滞税がかかるため、早めの準備が欠かせません。
5. 相続税がかかる財産・かからない財産
相続税の対象になるのは「すべての財産」ではありません。
課税対象になる財産
- 預貯金・現金
- 不動産(土地・建物)
- 株式などの有価証券
- 生命保険金(非課税枠を超える部分)
- 死亡退職金(非課税枠を超える部分)
課税対象外となる財産
- お墓・仏壇・仏具
- 国や地方公共団体への寄付財産
- 公益事業に使う財産
👉 詳細は次回以降の記事で解説しますが、課税対象かどうかを整理することが、申告が必要かどうかを判断する第一歩になります。
6. ケーススタディで考える
ケース1:申告が必要な場合
相続人:妻と子2人(計3人)
相続財産:土地(5,000万円)、預金(2,000万円)
基礎控除額=4,800万円
相続財産合計=7,000万円
→ 基礎控除を超えるため申告が必要。
ケース2:申告が不要な場合
相続人:子2人(計2人)
相続財産:預金(2,000万円)、生命保険金(800万円)
基礎控除額=4,200万円
相続財産合計=2,800万円
→ 基礎控除以下のため申告不要。
7. まとめ
- 相続税は「相続や遺贈で財産を取得した人」にかかる税金
- 申告が必要かどうかは 基礎控除額との比較 で判断
- 全国的には課税割合は約8~9%だが、都市部では注意が必要
- 期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」
次回は「相続税がかかる財産とかからない財産」について詳しく解説します。
参考資料
- 国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

