相続税がかかる財産・かからない財産~相続の対象と非課税の区分を理解しよう~

税理士
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相続税を計算するうえで大切なのは、「どの財産が課税対象になるか」を正しく理解することです。現金や不動産はもちろん、生命保険金や退職金も相続財産に含まれるケースがあります。一方で、お墓や仏壇など、税金がかからない財産もあります。

今回は、国税庁のパンフレット(令和7年分用)をもとに、「かかる財産」と「かからない財産」を整理し、さらに令和9年から始まる改正点についても触れていきます。


1. 相続税がかかる財産

相続税の対象となる財産は、大きく分けて次の3つです。

(1) 本来の相続財産

被相続人が生前に所有していた財産です。

  • 現金・預貯金
  • 不動産(土地・建物)
  • 有価証券(株式、投資信託、国債など)
  • 貴金属や美術品
  • 貸付金や売掛金

形式上は家族名義でも、実質的に被相続人が所有していたとみなされる「名義預金」「名義株」も含まれます。


(2) みなし相続財産

被相続人が亡くなったことにより相続人が受け取る財産で、法律上「相続財産」とみなされるものです。

  • 生命保険金
  • 死亡退職金

遺産分割の対象ではありませんが、相続税の課税対象に含まれます。


(3) 相続開始前の贈与財産

被相続人が生前に贈与した財産のうち、一定期間内のものは「相続財産に含める」ルールがあります。

  • 令和7年分(現行ルール)
    相続開始前 3年以内 の贈与財産が対象
  • 令和9年1月1日以後に開始する相続(改正後ルール)
    相続開始前 7年以内 の贈与財産が対象

2. 相続税がかからない財産

一方で、次のような財産は相続税の課税対象外です。

  • 墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚など
  • 公益事業に使うための財産
  • 国や地方公共団体などに寄付した財産

これらは「生活や祭祀に必要なもの」「公益のために使われるもの」として課税されません。


3. 一定額まで非課税となるもの

すべてが課税対象に含まれるわけではなく、一定額まで非課税とされる制度があります。

(1) 生命保険金

500万円 × 法定相続人の数

まで非課税。

(2) 死亡退職金

生命保険金と同じく、

500万円 × 法定相続人の数

まで非課税。


4. ケーススタディで考える

ケース1:相続税がかかる例

父が亡くなり、以下の財産があった場合。

  • 自宅(土地・建物):4,000万円
  • 預金:1,000万円
  • 生命保険金:1,500万円(受取人は妻)

相続人は妻と子2人(計3人)。

  • 基礎控除額:3,000万円+600万円×3=4,800万円
  • 生命保険金の非課税枠:500万円×3=1,500万円

課税価格は、4,000万円+1,000万円=5,000万円。
保険金は非課税枠で全額控除。結果として課税遺産総額は5,000万円。基礎控除を超えるため、申告が必要です。


ケース2:相続税がかからない例

母が亡くなり、財産が次の通りだった場合。

  • 預金:2,000万円
  • 生命保険金:1,200万円(受取人は子)
  • 墓地:200万円

相続人は子2人。

  • 基礎控除額:3,000万円+600万円×2=4,200万円
  • 生命保険金の非課税枠:500万円×2=1,000万円

課税価格は 2,000万円+(1,200万円-1,000万円)=2,200万円。
墓地は非課税なので含めません。結果、基礎控除以下となり、申告も納税も不要です。


5. 注意したいポイント

  • 名義預金の見落とし → 税務署から指摘されやすい
  • 保険金や退職金は遺産分割協議に含まれないが課税対象になる
  • 令和9年から7年ルールが始まるため、早めの贈与計画が必要

まとめ

  • 相続税がかかる財産は「本来の財産」「みなし相続財産」「相続開始前の贈与」
  • お墓・仏壇などは非課税
  • 生命保険金・退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠あり
  • 現行(令和7年分)は3年以内の贈与が対象令和9年分からは7年以内に延長予定

次回は「相続税の計算と控除の仕組み」を解説します。


参考資料

  • 国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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