相続登記義務化と不動産の名義変更手続き──“名義を変えるだけ”が、実は大切な家族の手続き

税理士
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■ 1.なぜ今「相続登記の義務化」が話題に?

2024年4月から、不動産の相続登記が義務化されました。
つまり、親の家や土地を相続したら、必ず名義を変えなければならないというルールです。

これまで日本では、相続しても登記をしないまま放置されるケースが多く、
その結果――

  • 所有者がわからない「空き家」や「耕作放棄地」が増加
  • 公共事業や再開発が進まない
    といった社会問題にまで発展していました。

そこで、「名義を変える=相続登記」を義務にすることで、
土地・建物の所有関係を明確にしようというのが今回の改正の目的です。


■ 2.登記をしないとどうなる?

義務化後は、次のルールが適用されます。

📅 相続を知ってから3年以内に登記しないと、
10万円以下の過料(罰金)になる可能性があります。

つまり、「うっかり放置」も対象。
「とりあえず遺産分割が決まってから…」と後回しにしていると、
知らないうちに違反になることもあります。


■ 3.相続登記の手続きの流れ

実際の名義変更の流れは、次のとおりです。

① 相続人の確定

戸籍をたどって、法定相続人を確認します。
→ 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本、
 相続人全員の戸籍謄本が必要です。

② 遺産分割協議書の作成

相続人全員で話し合い、誰がどの不動産を相続するかを決定。
全員の署名・押印(実印)が必要です。

③ 登記申請書の作成

法務局のホームページから様式をダウンロードして記入。
添付書類をそろえて提出します。

④ 登録免許税の納付

固定資産評価額の0.4%が目安。
(例:評価額2,000万円なら8万円)

⑤ 名義変更完了

完了通知が届けば、正式に相続人名義となります。


■ 4.登記を忘れがちなケース

意外と多いのが次のパターンです👇

ケース注意点
親名義のまま住み続けている名義を変えていないと売却・融資・相続が難しくなる
共有名義の土地他の相続人が亡くなると手続きが複雑化
空き家のまま放置固定資産税はかかるのに、処分できない状態に
田舎の土地・山林登記簿上は存在するが、誰も場所を知らない

「名義を変えないこと」が、実は一番のリスクです。


■ 5.相続人申告登記という新制度

「とりあえず期限だけ守りたい」という人のために、
新しく「相続人申告登記」という制度もできました。

✅ 相続登記をすぐにできない場合でも、
“自分が相続人であること”を法務局に申告すればOK。

これを出しておけば、3年以内の義務違反にはならない扱いになります。
ただし、正式な名義変更が終わったわけではないので、
遺産分割がまとまり次第、正式な登記が必要です。


■ 6.不動産を放置するとどうなる?

相続登記をしないまま放置すると、

  • 固定資産税の納税通知が宙に浮く
  • 売却・賃貸・解体などができない
  • 代替わりのたびに相続人が増え、話がまとまらない

最終的には“所有者不明土地問題”となり、
将来の相続人が困ることになります。


■ 7.専門家に頼むときの目安

相続登記は自分で行うことも可能ですが、

  • 相続人が多い
  • 不動産が複数ある
  • 戸籍が複雑(転籍・除籍など)
    といったケースでは、司法書士への依頼が安心です。

費用の目安は、

書類作成・登記申請で5万円〜10万円程度。

相続税が絡む場合は、税理士とも連携するとスムーズです。


■ 8.まとめ:登記は“相続のゴール”ではなく“スタート”

観点内容
義務化の開始2024年4月1日以降の相続から適用
登記の期限相続を知った日から3年以内
違反時の罰則10万円以下の過料
救済制度相続人申告登記(仮登録)
実務上の注意点登記後に固定資産税・名義変更手続きも忘れずに

💬 最後に

不動産の名義変更は、ただの“書類の更新”ではありません。

それは、家族が未来へバトンを渡す「引き継ぎの儀式」です。

「まだ住んでるから大丈夫」ではなく、
“相続が起きたら3年以内”を合言葉に、早めの手続きを心がけましょう。


参考資料

  • 法務省「相続登記の義務化 特設ページ」(2024年改正対応)
  • 国土交通省「所有者不明土地問題に関する報告書」
  • 東京税理士会「令和7年度第5回会員研修会資料」塩野入文雄講師(2025年5月8日)
  • 日本司法書士会連合会『相続登記手続きガイド』

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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