相続登記のオンライン申請 自宅から進められる手続きと実務ポイント(オンライン相続手続きシリーズ 第2回)

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2024年から相続登記の申請が義務化され、相続手続きの中で最も問い合わせが増えた分野のひとつが「不動産の名義変更」です。従来は法務局へ出向いて申請書類を提出する方法が一般的でしたが、現在ではオンライン申請の仕組みが整い、自宅から手続きを完結する選択肢が広がっています。
オンライン申請は便利である一方、必要書類の取得、PDF化、署名データの準備など、途中で手順に迷うことも少なくありません。本稿では、相続登記をオンラインで進める際の流れ、必要書類、実務上のポイントを整理し、制度の全体像を解説します。

1 相続登記オンライン化の背景

相続登記は、亡くなった人の不動産を相続人の名義に変更する手続きです。
2024年から義務化され、法律上は「相続が発生してから3年以内に登記申請を行う」ことが求められるようになりました。背景には、長年の課題であった「所有者不明土地」の解消があります。

オンライン化が進んだ理由として、

  • 全国に法務局が偏在しており、遠方からの来局負担が大きい
  • 相続手続きのデジタル化(戸籍の電子化、マイナポータル連携)の流れ
  • 司法書士への依頼に限らない手続き多様化
    などが挙げられます。

法務局のオンライン申請システムを利用すれば、自宅から書類を提出でき、申請状況もネットで確認できます。


2 オンライン申請の全体の流れ

相続登記のオンライン申請は、大きく以下のステップで進みます。

(1)必要書類の収集

オンライン申請であっても、戸籍や評価証明書などの原資料は必ず事前に準備します。主な書類は次の通りです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産の固定資産評価証明書(市区町村で取得)
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名押印)
  • 法定相続情報一覧図(任意だが利用すると書類が簡略化)
  • 本人確認書類

最近は「法定相続情報証明制度」を利用するケースが増えており、相続登記に添付する戸籍一式をまとめて代替できます。原本返却の手間がなく、複数の金融機関の手続きにも利用できるため便利です。

(2)法務局のオンライン申請システムへアクセス

法務局の「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を使います。
利用するにはアカウント登録が必要で、パソコンでの操作が前提です。

申請書は画面上で作成できます。
物件情報(所在・地番・家屋番号)については、事前に登記事項証明書を取得して確認しておくと正確です。

(3)添付書類のPDF化

オンライン申請では、紙の戸籍や協議書をスキャンしPDF化して添付します。
ここでつまずくことが多いため注意が必要です。

  • PDFの文字が読みづらい場合は却下される可能性がある
  • 1ファイルが大きすぎるとアップロード不可
  • 原本提出が必要な書類は後日郵送するケースもある

遺産分割協議書は、実印で押印した現物をスキャンしPDF化します。印影の鮮明さが重要です。

(4)申請データの送信と手数料の納付

オンライン申請では電子納付が可能です。
申請が受理されると、法務局から補正指示が来ることがあり、内容に不備がなければ登記完了日が通知されます。

(5)完了後の登記事項証明書の取得

オンラインで登記が完了した後は、登記事項証明書を郵送で受け取るか、オンライン請求で取得できます。


3 オンライン申請のメリット

オンライン化によって得られる主なメリットは次の通りです。

● 来局不要で時間を節約できる

仕事や介護で時間が取りづらい人にとって、来局せずに申請できる点は大きな利点です。

● 申請状況をネットで確認できる

書面申請では電話確認が必要でしたが、オンラインでは処理状況が随時更新されます。

● 書類の差し替えが容易

補正指示があった際、PDFの差し替えをオンラインで完結できます。

● 法定相続情報一覧図と相性が良い

デジタル化された一覧図を添付することで、戸籍書類の束をスキャンする負担を軽減できます。


4 オンライン申請の注意点

便利な一方で、書面申請より注意すべき点もあります。

● 書類の不備が発見されやすい

PDF化された書類は鮮明さが重要で、読みにくいと補正や却下につながります。

● 各相続人の合意内容が明確でないと手続きが進まない

オンラインであっても遺産分割協議書の整備は必須です。
協議書が曖昧だったり署名が欠けていたりすると補正対象になります。

● 不動産が複数ある場合は入力量が増える

土地・建物が複数あると入力項目が増え、間違えやすいため慎重な確認が必要です。

● 自分で申請する場合は専門的な判断も伴う

不動産の評価や登記原因の書き方など、専門知識が求められる部分があります。
必要に応じて司法書士へ依頼する選択肢も有効です。


5 司法書士依頼との比較

オンライン申請を自分で行うケースと司法書士へ依頼するケースには特徴があります。

項目自分でオンライン申請司法書士へ依頼
費用登録免許税のみ報酬がかかる
手間書類収集・PDF化・入力を自分で実施大半を任せられる
補正対応自分で行う専門家が対応
メリットコストを抑えられる正確・迅速・トラブル防止
デメリット手続きの難易度が高い費用負担

オンライン申請は便利ですが、家庭ごとに事情が異なるため、負担感やリスクに応じて専門家の支援を活用することも有効です。


結論

相続登記のオンライン申請は、制度の義務化とデジタル化の流れの中でますます重要になる手続きです。来局の負担を減らせる一方で、書類の準備やPDF化など、オンライン特有のハードルも存在します。
オンラインでの申請を選ぶ場合は、手順を理解したうえで、必要書類を早めに揃え、入力ミスやスキャンの不備を避けることが重要です。
相続登記は、相続手続き全体の入口であり、その後の資産管理や相続税申告にも影響するため、慎重に進めることが求められます。オンラインと専門家支援をうまく使い分け、家庭の状況に合った方法を選ぶことが、スムーズな相続手続きにつながります。


参考

・法務省「相続登記義務化の概要」
・法務局「登記・供託オンライン申請システム」
・地方自治体の固定資産評価証明書案内
・司法書士会資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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