暗号資産は、運用中は「将来性のある資産」に見えます。
しかし相続の場面では、一転して「扱いづらい財産」になることがあります。
年金世代にとって重要なのは、暗号資産を持つかどうかではなく、
相続時まで持ち続けるべきかを判断することです。
本稿では、相続対策の観点から、暗号資産を減らすかどうかの判断基準を整理します。
判断基準① 相続財産に占める割合が高すぎないか
最初に確認すべきは、相続財産全体に占める暗号資産の割合です。
暗号資産は、
・評価額が不安定
・納税資金に使いにくい
・相続人が扱いづらい
という特徴があります。
相続財産の中で暗号資産が大きな割合を占めている場合、それだけで相続リスクは高まります。
目安として、相続財産の数%を超える水準になっている場合は、減額を検討する合理性があります。
判断基準② 相続税の納税資金は確保できているか
相続税は、原則として現金で一括納付します。
暗号資産は、
・売却タイミングで価格が下落する可能性
・売却や換金に時間がかかる
という点から、納税資金としては不安定です。
「暗号資産を売れば払える」という前提は、相続では通用しません。
暗号資産を減らす判断は、納税資金を確実に確保できているかという視点から行う必要があります。
判断基準③ 相続人が暗号資産を扱えるか
相続人が、
・暗号資産の仕組みを理解しているか
・取引所やウォレットを使えるか
・価格変動に冷静に対応できるか
この点は極めて重要です。
相続人が暗号資産に不慣れな場合、暗号資産は「資産」ではなく「負担」になります。
相続人の理解度が低い場合は、生前に減らすという判断が現実的です。
判断基準④ 秘密鍵・管理情報を引き継げる状態か
暗号資産は、秘密鍵や復旧フレーズがなければ存在しないのと同じです。
これらの管理情報を、
・安全に
・確実に
・相続人が到達できる形
で残せないのであれば、相続対策としては不完全です。
管理体制を整えられない場合、暗号資産は「減らす対象」になります。
判断基準⑤ 「将来売る予定」が明確か
年金世代の暗号資産保有でよくあるのが、
「いつか使うかもしれない」
「そのうち売るつもり」
という曖昧な状態です。
しかし、相続対策ではこの曖昧さが最大のリスクになります。
売却時期や目的が明確でない暗号資産は、結果的に相続時まで残り、家族に判断を委ねることになります。
この状態に心当たりがある場合、減額を検討すべきサインです。
「減らす=全部売る」ではない
暗号資産を減らす判断は、必ずしも全売却を意味しません。
・一部を現金化する
・生活や相続に影響しない水準まで縮小する
・価格が高い局面で段階的に減らす
といった柔軟な対応が考えられます。
重要なのは、「相続時に困らない量」に調整することです。
年金世代にとっての現実的な考え方
年金世代にとって、暗号資産は
・生活費の原資ではない
・相続の主役でもない
という位置づけが基本になります。
将来性への期待よりも、
自分が判断できるうちに整理できるか
という視点を優先すべき段階に入っています。
結論
相続対策として暗号資産を減らすかどうかは、価格見通しで決めるものではありません。
判断軸は、
・相続財産に占める割合
・納税資金の確保
・相続人の対応力
・管理情報の引き継ぎ可能性
・将来の売却計画の明確さ
にあります。
これらの条件が一つでも不安定であれば、「持ち続ける」より「減らす」判断が、結果的に家族を守ることになります。
参考
・日本経済新聞「〈ポジション〉ビットコインの『冬』に備え」
・国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱い」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
