これまでの記事で「相続税の仕組み」や「使える特例・節税策」を解説してきました。
最終回となる今回は、実際に相続を迎える前にできる対策や、申告・手続きで注意すべきポイントをまとめます。
1. 生前贈与の活用
「相続発生時に一度に課税されるより、生前に少しずつ渡した方が有利」という考え方があります。
代表的なのが「暦年贈与」です。毎年110万円までなら贈与税がかからない仕組みで、少額をコツコツ渡すことで相続財産を圧縮できます。
ただし、令和5年の税制改正で「相続前7年間の贈与」が持ち戻し対象となり、注意が必要になりました。相続直前の贈与は効果が限定的になるため、早めに計画的に始めることが大切です。
2. 遺言書を準備する
相続トラブルで最も多いのは「分け方」を巡る争いです。
相続税の額そのものよりも、兄弟間での不公平感や手続きの遅れが火種になりがち。
そこで役立つのが 遺言書 です。
- 誰に何を渡すのかを明確にしておける
- 法定相続分とは違う分け方も可能
- 公正証書遺言なら法的効力が強く、安心
特例を使うにしても、「誰が不動産を引き継ぐのか」を明確にしておかないと制度を活用できないことがあります。遺言書は相続税対策であると同時に「家族の安心対策」でもあります。
3. 相続税申告の期限に注意
相続税の申告期限は 相続開始から10か月以内。
「思ったより時間がない」と感じる人が多いです。
なぜなら、財産の評価、不動産の調査、遺産分割協議書の作成、特例適用の確認など、やることが山積みだからです。
特に不動産評価や株式評価は専門性が高く、申告期限ぎりぎりになると間に合わなくなることも。
4. 専門家に相談するメリット
相続は家庭ごとに事情が違い、制度の使い方もケースバイケースです。
例えば…
- 同居の有無で小規模宅地等の特例が使えるかどうかが変わる
- 贈与と相続を組み合わせたほうが有利になることもある
- 相続人同士の話し合いが難航する場合、税理士・司法書士のサポートでスムーズに進められる
税金だけでなく、手続きや家族関係を含めた「トータルでの設計」が大切です。
5. 相続対策の目的は「家族の安心」
節税はもちろん大事ですが、本当の目的は「残された家族が困らないようにすること」です。
財産の分け方を明確にし、必要な資金を確保し、税負担をできるだけ軽くする。これが三本柱です。
まとめ
- 生前贈与は「早めにコツコツ」が基本
- 遺言書を準備しておくことで争いを防げる
- 相続税の申告期限は10か月以内。時間がないので早めの準備を
- 専門家のサポートで制度をフル活用できる
- 相続対策のゴールは「家族の安心」
👉 3回シリーズを通じて「相続税の仕組み」「節税特例」「生前対策」をご紹介しました。
「相続はまだ先のこと」と思っていても、突然やってくるのが現実です。早めの知識と準備が、家族の安心につながります。
📌 参考:
日本経済新聞朝刊(2025年10月4日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
